ガスプロムが主導する建設企業に対し、パイプラインが通るバルト海におけるデンマークの大陸棚での工事を許可した。
Nord Stream -2 は全長約1200キロメートルで、バルト海を通ってロシアと独北部を結ぶ。輸送能力は年550億立方メートルで、ロシアの欧州へのガス輸出量の約4分の1に当たる。ドイツなど欧州企業も事業に参加し、これまでに建設作業の9割弱の建設が終わっており、デンマークの判断を受け、年内に完工するとの観測が出ている。
ロシアのGazpromは2015年、シベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまで供給するNord Stream Pipelineの倍増計画に着手した。(Nord Stream 1 は2011年に完成)
2015年9月にShareholders' Agreementが調印された。
Nord Stream -1 Nord Stream -2 Gazprom 51.0% 51.0% E.ON 15.5% 10.0% Wintershall(BASF子会社) 15.5% 10.0% Nederlandse Gasunie 9.0% ー GDF SUEZ 9.0% ー Shell ー 10.0% OMV ー 10.0% ENGIE 仏電気・ガス事業者 ー 9.0% 2015/7/1 Nord Stream 倍増計画
Nord Stream -2は2017年にデンマークが領海での建設許可を保留したため工事が中断された。
2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に編入して以降、欧州はロシアへの警戒心が増大した。米国やポーランドなどが、ロシアへのガス依存を高め、欧州の安全保障を脅かすとして中止を訴え、デンマークが許可を保留した。
これに対し、ロシアはパイプラインを純粋に商業的な事業と主張し、許可を求めていた。
また、ドイツは安価な天然ガスを安定需給できるとして計画に賛成してきた。
ドイツの国防相は10月11日、Nord Stream -2の現状を踏まえると、建設を中止できると考えるのは非現実的だと述べた。ドイツのエネルギー供給確保においてNord Stream -2 は重要な要素だと指摘、また同パイプラインに関する法的枠組みには、ウクライナの保護策が盛り込まれる必要があると述べ、従来のドイツの立場を繰り返した。
ロシアとウクライナの天然ガスパイプラインに関する抗争については 2014/11/4 ロシアとウクライナ、天然ガス交渉で合意 を参照
ロシアが欧州各国にガスを輸出するためウクライナ国内のパイプラインを利用する契約は、今年末に期限を迎える。
両国はEUを仲介役として新規契約を交渉しているが、立場の隔たりが埋められていない。ロシアは1年ごとの契約更新を主張する一方、ウクライナは長期契約を求めているという。
ロシアはNord Stream -2完工のメドが立ったことにより、より強気で交渉に臨む可能性も指摘されている。
Nord Stream -2が完成すれば、従来のパイプラインが通るウクライナのガス通過料収入が大幅に減ることが予想される。このため、ドイツのメルケル首相はロシアのプーチン大統領に対し、「ウクライナ経由のガス供給は続ける」との確約を求めた。
ウクライナを迂回したロシア産ガスの輸出ルートでは、黒海からトルコに輸出し、さらにブルガリアやハンガリーなどに輸出するTurkish Stream も建設されている。 2020年に運用開始の予定。
ロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream 計画は、EUの規制で、ブルガリアが認可しないことが理由で、2014年12月1日に中止となったが、ロシアとトルコは同日、黒海経由でトルコにつながる新たなガスパイプラインの建設で合意し、Gazpromがトルコの Petroleum Pipeline Corporation (BOTAŞ) との間で覚書を交わした。
ロシアからトルコまでは黒海を通るBlue Stream Pipeline があるが、新しいパイプラインを建設する。
海底部分のうち660kmはSouth Stream用に予定されていたルート、その他に 250kmがトルコ向けの新ルートとなる。黒海南西部沿岸の都市 Kıyıköyから陸上に入り、ギリシア国境のİpsala までの180kmが敷設される。
年間輸送能力は630億m3315億m3で、うちトルコが140億m3 半分を引き取る。トルコからブルガリア、セルビア、ハンガリーを経由して欧州へと輸送する。
2014/12/4 ロシア、South Stream 計画を取り止め
2015/7/15 ギリシャへの中国、ロシアの接近
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