富士フイルムホールディングスは11月5日、Xerox Corporationとの間で、Xerox が保有する富士ゼロックスの株式の全てを富士フイルムホールディングスが取得する契約を締結したと発表した。富士フィルムは米Xeroxの買収を断念した。
富士フイルムおよびXerox の各取締役会において、全会一致で承認された。本件の取引完了は2019年11月中を予定している。
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富士フイルムは2018年1月にXerox買収を発表した。
富士フィルムが持つ富士ゼロックスの株式(75%)を61.8億ドル(6710億円)と評価し、これを Xerox に渡す見返りにXerox株の50.1%を取得する。
Xerox株主はXeroxの株式100%の代わりに、Xeroxの49.9%と特別配当25億ドルを受け取る。
しかし、Xeroxの大株主がこの取引に反対、Xeroxが同年5月に富士フイルムと結んだ買収契約を一方的に破棄した。
富士フイルムはXeroxに損害賠償を求めて訴訟を起こした。
推移:
2018/2/1 富士フィルム、米国Xerox Corporationの50.1%を取得 2018/2/15 富士フイルムによる買収、ゼロックス大株主が差し止め提訴 2018/2/22 ゼロックス大株主、富士フイルム以外への身売り提案 2018/3/5 米ゼロックス、大株主が再び提訴 2018/4/23 Xeroxを巡る戦い 激化、委任状争奪戦に発展か? 2018/4/30 富士フイルムの Xerox買収、NYの裁判所が差し止め仮処分 2018/5/2 Xerox、富士フィルムとの統合見直し、株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解 2018/5/4 Xerox、株主との和解を撤回、現取締役会メンバー全員が留任 2018/5/11 Xerox、富士フィルムと条件面で再交渉へ 2018/5/14 2018/6/21 2018/6/27
その後、事態は進展せず、今回、富士フィルムは米Xeroxの買収を断念し、富士ゼロックスのXerox持分を買い取り、100%子会社とする。
取引概要:
富士フイルムホールディングスによるXerox保有の富士ゼロックス株式25%ならびに
富士フィルムとXeroxのJVでレーザープリンターや消耗品のOEM販売とサポートを行う Xerox International Partners のXerox 持分(51%) の取得対価は総額23億ドル(約2,530億円)で、富士ゼロックス株は22億ドル、後者が1億ドル。
2018年1月に富士フィルムは富士ゼロックスの75%を61.8億ドル(6710億円)と評価した。
これによると、25%分は20.6億ドルに相当する。
今回、これを22億ドル(7%増し)で購入することとなる。Xerox株主を満足させるためか?欧米市場を含むワールドワイドでOEM供給の拡大を可能にする新たな契約の締結
取引完了時に富士フィルムが2018年6月18日に提起したXeroxに対する10億ドルの損害賠償請求訴訟を取り下げ
富士ゼロックスによる Xeroxへの5年間の製品供給の継続
富士フイルムの古森重隆会長は「ドキュメント事業を成熟産業と捉える見方もあるが、私はそうは思わない。富士ゼロックスは販売地域を全世界に広げる」と述べた。
Xeroxは、富士ゼロックス株の売却で得る23億ドルのうち、5億5000万ドルを負債の返済にまわし、残りは株主還元とM&Aに充てる。
付記
Xeroxは米パソコン大手 HP Inc. (Hewlett-Packard)に対して買収提案を行った。現金と株式交換の組み合わせによる買収で、買収額は約330億ドルとされる。
HP Inc.は11月6日、協議が進行中と発表した。
We have had conversations with Xerox Holdings Corporation from time to time about a potential business combination. We have considered, among other things, what would be required to merit a transaction. Most recently, we received a proposal transmitted yesterday (2019/11/5).
We have a record of taking action if there is a better path forward and will continue to act with deliberation, discipline and an eye towards what is in the best interest of all our shareholders."
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富士フィルムとXeroxの問題が、これで全て解決した訳ではない。
現在、Xeroxと富士ゼロックスの技術契約に基づき、富士ゼロックスはアジア太平洋で「Xerox」の商標を使って独占的に販売する権利を持つ。事務機器市場が縮小するなかで、アジア太平洋市場は成長が続いている。
この契約では営業地域などを決めており、5年ごとに更新する。次回は2021年の更新で、更新がなければ、2021年からはXeroxが「Xerox」の商標で独占的に販売できることになる。
Xeroxの大株主で「物言う株主」として知られる著名投資家 Carl Icahn と同じく大株主のDarwin Deason は富士フィルムによる買収に反対し、株主に訴え続けてきた。
Carl Icahn とDeasonは2018年2月20日、Xeroxの株主に対し「競合他社との合併や身売り」や「買収ファンドへの身売り」を提案する書簡を公開したが、その中で、「契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つ。その場合、Xeroxは世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができる」と述べている。
2018/2/22 ゼロックス大株主、富士フイルム以外への身売り提案
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