Saudi Aramco は11月17日、新規株式公開(IPO)の 購入希望の受け付けを正式に始めた。
AramcoはIPOを2段階で実施する。国内の証券取引所Tadawulへの上場を先行させ、2020年以降に海外市場でのIPOに踏み切る。
同社の発行済み株式数は2千億株だが、先ず、その1.5%の30億株を国内で売り出す。
サウジ人やサウジに居住する外国人投資家は11月28日までに購入の申し込みをする。内外の機関投資家向けの販売活動も正式に始まった。
全体の応募の締め切りは12月4日で、Aramcoは12月5日に最終的な売り出し価格を発表する。
サウジアラビア通貨庁(SAMA)は国内投資家の需要を喚起するため、IPOでAramco株を取得するリテール投資家への貸し出し上限について、通常のIPOの2倍に引き上げた。
Aramcoが設定した目標株価は30~32サウジリヤル (約 8.10~8.64米ドル) で、30億株で243~259億ドルになる。2014年の中国アリババグループがNew Yorkで調達した250億ドルを超す「史上最大のIPO」をめざす。
この株価で計算すると、同社の企業価値は1.62~1.73兆ドルとなり、時価総額1兆ドル超えの米国のアップルやマイクロソフトを上回り、世界最大となるが、ムハンマド皇太子がこれまで主張してきた「2兆ドル」 の看板を取り下げた。
IPOで調達された資金は、サウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)に入れ、内外の市場に投資してリターンを将来世代のために活用する。PIFはソフトバンク・ビジョン・ファンドに450億ドル出資している。
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Aramcoの2018年の純利益は1,110億ドル、売上高は3,150億ドルだった。これは Apple、Google、Exxon Mobil の利益の合計に相当する。
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Aramco は当初、2018年下期にも株式の5%を内外市場で公開する予定で、上場する市場(複数)については、New York、London、Tokyo、Hong Kong などが候補として挙がっていた。
その後、国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだとされ、日本は事実上、選択から外れたとみられていた。
しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられた。
2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更
Wall Street Journalは8月29日、Saudi Aramco が、2020年以降に実施する新規株式公開(IPO)で東京市場への上場を再検討していると報じた。
東京が再び候補となったのは、実施を見込んでいたロンドンはBrexitの混乱、香港市場は民衆デモが影響し、魅力が薄れたためである。
ニューヨーク市場は当初、有力上場先として検討対象となったが、米国での訴訟リスクが障壁となっている。
サウジの閣僚とAramco幹部で構成する同社の取締役会が8月の会合で、「Aramcoがいかなる法的措置からも保護される免責特権を与えられない限り」米国での上場は検討しないとの結論に達したとされる。関係筋は、Aramcoに免責特権が与えられることは「完全に不可能ではないが、当然実現し難い」と述べた。
米国での訴訟リスク:
1) テロ支援制裁法
米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立した。
2018年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。
サウジ政府が最大株主になるAramcoは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。
2) 気候変動
ニューヨーク市は2018年1月10日、ExxonMobil、Chevron、BP、Shell、ConocoPhillips の5社を提訴すると発表した。
5社が気候変動の一因となっており、過去及び将来ニューヨーク市に財政的負担を強いるとし、港湾保護、上下水設備の改善、気候変動緩和、公共医療活動等に費やす数十億米ドルの補償を求める。
3) 石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案
米下院司法委員会は2019年2月7日、石油輸出国機構(OEC)加盟国を反トラスト法違反で提訴することを可能にする「石油生産輸出カルテル禁止(No Oil Producing and Exporting Cartels Act : NOPEC法案)」を全会一致で可決した。同様の法案が上院の財政委員会に提出された。
米国政府がOPEC加盟国をSherman Antitrust Actで訴訟できるというもの。
2019/9/2 サウジアラムコ、東京への上場を再検討
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