米議会、香港人権法案を可決

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香港でデモが拡大する中、米議会上院は11月19日、香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」を発声投票(voice vote)で全会一致で可決した。

香港に高度な自治を認める「一国二制度」が機能しているかどうか米政府に毎年の検証を義務付け、人権を侵した中国政府関係者らに制裁を科せるようにする内容。デモ隊への強硬姿勢を強める中国政府と香港政府をけん制する狙いがある。

10月15日に下院で可決した法案を一部修正した。

同時に、香港警察に催涙ガスなどの群衆を整理するための武器売却を禁じる法案も可決した。

これを受け、下院は11月20日、上院案(両法案)を再度可決した。

香港人権・民主主義法案:賛成 417 / 反対 1 (共和党) / 棄権 13

武器売却禁止法案:賛成 417 / 反対 0 / 棄権 14

両法案はホワイトハウスに送られた。大統領は日曜を除く10日以内に法案に署名、若しくは、拒否権を発動する。 何もしないと法律となる。(議会が休会中なら廃案となる。)
拒否権発動の場合、議会は
上下両院で3 分の2 以上の賛成で覆すことができる。(今回の場合、上下院とも圧倒的多数で可決しており、拒否権を覆すことは可能と思われる。)

共和、民主両党議員が同法案で行動を求める中でも、トランプ大統領は中国との貿易紛争の解決に力を注ぎ、香港の騒乱に関して沈黙を守ってきた。来年の大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとって、貿易政策を巡る不透明感を払拭し、景気てこ入れを図るため、中国との貿易合意の取りまとめが急務である。

同法案への超党派の支持は、トランプ政権の経済・外交政策に大きな難題を突き付ける。

大統領が署名し、法案が成立すれば、内政干渉だと断じ、痛烈に批判している中国と真っ向から衝突することになり、米中貿易合意が危うくなる可能性がある。

トランプ大統領は11月22日、FOXニュースのインタビューで、香港での人権尊重などを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名すべきか苦悩する胸の内を打ち明けた。

「我々は香港を支持する必要がある」と指摘した上で「習氏は私の友人だ。すばらしい人物だ」と強調、香港の人権尊重と習氏との個人的関係を「両立させたい」と語った。

「米中は史上最大の貿易合意に向けた交渉過程にある。もし合意できればそれはすばらしい」とも話した。

付記

トランプ米大統領は11月27日、「香港人権・民主主義法」に署名し、同法は成立した。

トランプ氏は声明で「中国の習近平国家主席と香港市民への敬意をもって法律に署名した。中国と香港の指導者と代議員が友好的に隔たりを埋め、長きにわたって全ての人の平和と繁栄につながるよう希望している」と表明した。

付記

中国政府は12月2日、対抗措置として、アメリカ軍の艦船が香港に寄港することを拒否するとともに、アメリカの複数のNGOに制裁を科すと発表した。

「深刻な内政干渉に対し、中国は断固とした態度を示す」としたうえで「中国政府は、アメリカ軍の艦船が香港に寄港する申請をしばらくの間、拒否するとともに、香港の混乱の中で極めて悪質な行為を行ったNGOに制裁を科すことを決定した」と述べた。

制裁対象のNGOは、全米民主主義基金、国際共和研究所、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ、人権団体フリーダムハウスなど。これらのNGOが「中国に反対し香港を乱す分子を支持し、極端な暴力犯罪行為に従事するよう教唆し、香港独立の分裂活動を扇動した。今の香港の混乱状況に重大な責任があり、相応の代償を払わなければならない」とした。制裁内容は明らかにしていない。


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法案のベースとなっているのは、「米国・香港政策法」(United States-Hong Kong Policy Act)で、香港の扱い方を規定する法律として、1992年に米国議会を通過し、1997年7月1日、香港が中国に返還されると同時に効力が発生した。

香港は西側自由社会の一員として、植民地時代から法の支配や自由経済といった分野でいずれも国際基準に達していたことから、「香港政策法」の下で米国は香港に通商や投資、出入国、海運等の諸方面において特別待遇を提供するという約束がなされた。

米国は一国二制度を前提に、関税などで中国本土よりも香港を優遇している。

問題は、香港が特別待遇を受ける際に、十分な自治が与えられているかどうかを判断する基準が明確ではなかった。

今後、十分な自治が与えられていない状況になる恐れが強く、その場合には「米国・香港政策法」により香港に与えられている特別待遇をどうするのかが問題となる。

「香港人権・民主主義法案」の概要は次の通り。

各省庁に、香港の状況が「米国・香港政策法」により与えられた特別待遇に値するかどうかを評価させる。

国務省は議会に対し毎年、香港が特別待遇に値するだけの中国からの自治を十分維持しているかどうかの報告を行う。報告には、1) 香港の市民の自由、2) 香港の自治の崩壊が米・香港間の協力にどのように影響を与えるかを含む。

商務省は議会に対し毎年、中国が米国の輸出管理、禁輸を避けるため香港を利用しているかどうかの報告を行う。

香港が米国民を中国本国その他に送還するリスクを生じるような法案を出したり通したりした場合、大統領は議会に対し、1)香港における米国民及び米国企業の保護策と、2)香港が米国との間の協定を守る法律を法的に管理する能力を持つかどうかを、議会に報告する。

国務省は、本来資格がある者に対し、香港政府が反対したからとしてビザを拒否することをしない。

大統領は議会に対し、香港で国際的に認められた人権を無視する行為(香港人の法によらない引き渡しや拷問を含む)の責任者のリストを報告する。リストの人間の米国入国を禁じ、制裁を科す。

香港政府は21日、同法案通過を受けて、「香港の内政に干渉するだけでなく、暴力的な抗議活動家らに誤ったシグナルを送るものだ。香港情勢の沈静化に役立たない」と批判、法案に「強く反対する」と表明した。

香港政府報道官はまた、米政府が法案に「賢明に対処」し、成立を「阻止」することを望むと語った。

中国外務省は20日、「中国への内政干渉で、強烈な非難と断固とした反対を表明する」との談話を出した。「米国が独断専行するなら有力な措置をとる」とも強調し、報復措置も辞さない構えをみせた。

王毅国務委員兼外交部長(外相)は21日に米国のコーエン元国防長官と北京で会談した際、以下の通り述べた。

このいわゆる『香港人権・民主法案』は、一国の国内法によって他国への内政干渉を企てておきながら、何が民主なのか?

香港の違法暴力行為がもたらす破壊を無視しておいて、何が人権なのか?

この法案は事実上、暴力犯罪分子を黙認するという誤ったシグナルを送った。香港を混乱させ、さらには破壊することがその本質だ。

これは中国の内政への露骨な干渉であり、香港同胞の共通利益と根本的利益を深刻に損なうものでもある。中国側はこれに断固として反対する。

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