SKケミカルは11月27日、同社が独自に開発した認知症治療パッチ「SID710」(成分名=リバスチグミン)が、米食品医薬品局(FDA)から最終的に市販の許可を受けたと明らかにした。
系列のSK Biopharmaceuticalsが11月22日 に、独自に開発したてんかん新薬 XCOPRI® がFDAから販売許可を受けたと発表したのに続いた。
リバスチグミンは、Novartisが開発したアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、 抗アルツハイマー治療薬としては世界初のパッチ剤である。
日本では、2004年4月に小野薬品とノバルティス ファーマが経皮吸収型の貼付剤として共同開発を開始し、2011年4月に「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果として製造販売承認を取得、同年7月に小野薬品からは「リバスタッチ®パッチ」、ノバルティス ファーマからは「Exelon ®パッチ」の製品名でそれぞれ発売した。
海外では、2007年7月に米国、同年9月にEUで承認されて以来、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の標準治療薬の一つとして、世界90カ国以上で承認されてい る。
パッチ型の製品は、服薬時間や回数を記憶するのが難しいか、錠剤の服用が困難な認知症患者が1日1回肌に張り付けば、薬物が持続的に伝わる特徴があ り、錠剤の経口用製品と効果は同じでありながら、嘔吐や炎症などの副作用が少なく、胃と肝臓への負担が少ないのがこの製品の強みとされる。
SKケミカルの認知症治療パッチ「SID710」はExelonのジェネリック品。皮膚から薬物を体内に伝えるコア技術である経皮伝達システムの高い技術障壁のため、競合他社では製品開発に苦労したが、SKケミカルは1995年に世界に先駆けて開発した関節炎治療パッチ「トラスト」の研究開発経験を活かして、2010年に開発に成功した。
2013年に欧州、2016年に豪州、2018年にカナダで承認を取得した。韓国内では"Wondron Patch"として2014年から販売されている。
現在まで計19カ国に進出しており、現在、ブラジル、サウジアラビアなどで許可手続きが進められている。
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アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症の患者の脳では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少してい る。神経と神経の情報のバトンタッチに必要な物質で、減少すると脳のネットワークがうまく働かなくなる。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンが分解されないように働き、脳の中でアセチルコリンが減るのを防 ぐ。
現在、日本では3種の薬が承認されている。
・アリセプト®(ドネペジル):アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症進行抑制剤として利用される。エーザイの杉本八郎らにより開発された。
・レミニール®、( ガランタミン):ヤンセンファーマ。軽-中度のアルツハイマー病や様々な記憶障害の治療に用いられる。
・リバスタッチ®、イクセロンパッチ® 上記のとおり、小野薬品とノバルティスファーマが開発した貼付剤
このほか、NMDA受容体拮抗薬として第一三共がメマリー®を販売している。
NMDA受容体は、グルタミン酸という神経伝達物質の受け皿だが、アルツハイマー病では脳の中でグルタミン酸の働きが乱れ、神経細胞が障害されたり神経の情報が障害されたりする。メマリー®はグルタミンの働きを抑えることにより、神経伝達を整えたり、神経細胞を保護する。
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