アステラス製薬、 米バイオ企業Audentesを買収

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アステラス製薬は12月2日、米国のバイオテクノロジー企業 Audentes Therapeutics, Inc.との間で、アステラス製薬がAudentes社を買収する契約を締結した。
本契約に基づき、 現金による株式公開買付けおよびそれに続く現金を対価とする合併を実施する。Astellas US Holdinngの100%子会社である Asilomar Acquisition Corp.を通じて行う。

公開買付け終了後、AsilomarとAudentesは、Audentesを存続会社として合併し、Audentesは アステラス製薬の連結子会社となる予定。

Audentesが発行済みの全ての普通株式を1株当り60.00米ドルの現金を対価として取得する。これは2019年12月2日終値に対して110%のプレミアムを加えた価格となり、総額は約30億米ドルとな る。

Audentesの取締役会は、本公開買付けへの応募をAudentes社株主に推奨する旨の決議をしてい る。

アステラス製薬は、「Focus Area アプローチによる価値創造」を経営計画2018における戦略目標の一つに掲げ、バイオロジーとモダリティ/テクノロジーを組み合わせ、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出を目指している。 現在、4つのPrimary Focusを特定し、優先的に経営資源を投下しているが、「遺伝子治療」をそれらに続く有望なPrimary Focus候補と位置付け、遺伝子治療薬の研究開発に取り組んでいる。

Audentesは、希少かつ重篤な神経筋疾患を対象に、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく遺伝子治療薬の研究開発に注力するバイオテクノロジー企業で、 特にX染色体連鎖性Myotubular Myopathy(XLMTM)を対象とするAT132は、第I/II相臨床開発段階にあ る。

Myotubular Myopathyは、生直後あるいは乳児期より、顔面を含む全身の筋緊張低下を主症状とする遺伝性筋疾患で、筋肉の発達に必要なミオチューブラリンと呼ばれる蛋白を作るのに必要な遺伝子であるMTM1の異常により起こる。

X連鎖劣性遺伝は基本的に男の子だけに起こる。症状は非常に重く、歩くことや食事が自分でできないだけでなく、自分で呼吸をすることも困難で、多くはチューブを使った食事(経管栄養)や人工呼吸器が必要になる。

予後も非常に悪く、半分の男の子は1歳半までに亡くなり、10歳まで生きることはほとんどない。

同社のAT132は、アデノ随伴ウイルスを使った遺伝子治療で、正常なMTM1遺伝子を筋肉の細胞に届けるように設計されており、正常なMTM1遺伝子により、筋肉の発達に必要なミオチューブラリンを作ることが可能になる。

アデノ随伴ウイルス(AAV)は、1965年にピッツバーグ大学のDr. Bob AtchisonとNIHのDr. Wallace Roweによりアデノウイルス調製中の混入物として発見された。その後の研究により、彼らはAAVウイルス粒子の複製がアデノウイルス存在下でのみ可能であることに気づいた。

アステラス製薬はAudentes社の買収の戦略的意義は以下の通り としている。

  • 極度の筋力低下、呼吸不全および早期の死亡という特徴を有する重篤で生命に関わる希少な神経筋疾患であるXLMTMを対象に開発されているAT132による、近い将来における当社の成長機会の獲得

  • Audentes社のAAVに基づく遺伝子治療薬の技術プラットフォーム、大規模な自社製造能力および神経筋疾患の研究開発に関する知見と、アステラス製薬の研究開発力およびグローバルでの事業基盤を融合させることにより、遺伝子治療プログラムの強固なパイプラインの構築と開発のスピードアップ

  • Audentes社の製造能力、患者団体や学術的なパートナーなどとの貴重な人的ネットワークの取り込みによる、遺伝子治療の領域におけるパートナリングやパイプライン拡大の機会創出


なお、Audentes Therapeutics, Inc.の最近の決算は下記の通り(千ドル)で、赤字が続いている。

2016/12 2017/12 2018/12
売上高
当期純利益 -59,668 -90,238 -128,821

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