米中両政府は12月13日、貿易協議の「第1段階」で正式合意したと発表した。
米国は対中制裁関税の新規発動を中止し、発動済みの関税を一部緩和する。米政府によると、中国は米国から年間500億ドル規模の農産品購入を約束した。
来年1月初めの署名を目指して中国と合意文書の作成作業を進める。
今回は口頭での合意で、これから文書化して署名する。双方の発表には一致していない部分もあり、両国首脳が署名して初めて安心できる。
付記
トランプ大統領は12月31日、中国側高官を1月15日にホワイトハウスに招き、正式に合意文書に署名するとツイッターで表明した。
I will be signing our very large and comprehensive Phase One Trade Deal with China on January 15.
The ceremony will take place at the White House. High level representatives of China will be present.
At a later date I will be going to Beijing where talks will begin on Phase Two!
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Trump大統領は5月5日、中国の知的財産権侵害などを理由に2000億ドル分の同国製品に課す関税を、5月10日から現在の10%から25%に引き上げると表明した。
大統領は5月8日、フロリダ州で開かれた支持者集会で、「中国が約束を破った。そんなことは許さない。だから中国は代償を払うことになる」と述べた。
米ブルームバーグ通信によると、北京での閣僚協議で中国側が、外国企業に対する技術移転強要を是正する法整備を拒否した。ライトハイザー氏からその報告を受けた大統領が怒り、追加関税を課す対中制裁の強化を決めたという。
中国側は文書に署名して初めて正式合意であるとした。
2019/5/14 米中通商協議で3つの相違点
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White Houseは"Historic Phase One Trade Agreement"で合意したと誇った。
中国は、知財、技術移転、農業、金融サービス、通貨、為替レートの分野での構造改革に同意した。
効果的な実施のための強力な紛争解決制度を含んでいる。合意の一部として、米国はSection 301での追加関税を大きく修正することに合意した。
このPhase 1 交渉は、米国の対中貿易のバランス回復に向け重要な一歩となる。
USTRも同様の発表をしたが、中国製品に対する制裁関税については以下の通り。
米国はSection 301 調査で制裁関税を課した。
今回、中国製品2500億ドルに対する25%の制裁関税は維持する。1200億ドルに対する関税(現在15%)は7.5%とする。(12月15日発動予定の消費財 1600億ドル に対する15%の制裁関税は延期と報じられるが、USTRはこれに触れていない。)
USTRは Fact Sheet を発表した。
技術移転 中国は外国企業の中国進出や政府承認の取得等の見返りに技術移転を求める永年の慣行を止めることに同意。
技術移転、ライセンスは市場条件に基づく。
中国政府は外国の技術を取得するための海外投資支援をやめる。農業 貿易の構造的障壁を取り除き、米国の食品、農業製品・海産物の輸出の大幅拡大をサポート
農業製品・海産物への非関税障壁を取り除く。金融サービス 幅広い金融サービス業者に対する永年の貿易・投資バリアを取り除く。 通貨 通貨切り下げや為替レートの目標設定をやめる。透明性、説明メカニズムを推進。 貿易拡大 中国は2年間で2000億ドル以上の財・サービスの輸入(2017年比で)
輸入増は、製造製品、食料、農業・海産物、エネルギー製品、サービスを含む。
2021年以降も数年間、同じ傾向を続け、米中貿易のリバランスに。紛争解決 合意違反なら必要な措置を取る。(報道では関税再発動)
中国政府高官は13日、第1段階の貿易協定を発表した。
合意は、「序文、知的財産権、技術移転、食料と農産物、金融サービス、為替レートと透明性、貿易拡大、二国間評価と紛争解決、最終条項の9章」が含まれる。
可能な限り早期に法的なレビューや翻訳校正などの必要な手続きを完了し、契約の正式な署名に関する具体的な取り決めを交渉する。
米国が中国製品に対する関税の賦課を段階的に廃止する。
中国は米国の農産物の輸入を大幅に増やし、農産物の国内需給のギャップを埋めることができる。米国は、中国で作られた「調理された家禽およびナマズ製品」、および梨の柑橘類と新鮮なナツメヤシを米国に輸出することに同意した。
知的財産権に関して、企業秘密、薬物に関連する知的財産権の保護、特許の有効性の延長、地理的表示、著作権侵害の取り締まり、電子商取引プラットフォームの偽造など、いくつかの分野で合意に達した。著作権侵害および偽造製品の生産と輸出を取り締まり、商標の悪意のある登録を取り締まり、知的財産権の司法執行と手続きを強化する。
これは、知的財産保護の強化に関する中国の改革の方向に沿っており、イノベーションの保護に資し、外国の知的財産の中国への参入を促進し、高品質の経済発展を促進する必要性を満たしている。-
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報道では、制裁関税での合意は以下の通り。
米国 | 2500億ドル分は25%の関税を維持 1200億ドル分は15%の関税を半分の7.5%に引き下げ (署名の30日後に) 12/15実施予定の1600億ドル分への15%追加課税を延期 |
中国 | 12/15実施予定の5%&10%追加関税を延期(自動車関税 25%+10% も延期) |
米国の対中制裁関税:
当初 | 8/23 発表 | 10/11 | 12/13 | ||
①~③ 2500億ドル |
① 340億ドル | 2018/7/6 25% | 2019/10/1 30%予定 (→10/15に延期) |
引き上げ延期 (25%維持) |
25%据え置き |
② 160億ドル | 2018/8/23 25% | ||||
③ 2000億ドル | 2018/9/24 10% | ||||
→2019/5/10 25% | |||||
④ 3000億ドル | 一般 1200億ドル | 2019/9/1 10% | 9/1 15% | → | 7.5%に引き下げ |
消費財 1600億ドル | 2019/12/15 10% | 12/15 15%予定 | → | 発動見送り |
中国の対米報復関税:青字が今回合意
当初 | 8/1発表 | 12/13 | |||
①+② 500億ドル |
①340億ドル | 2018/7/6 25%
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(自動車) 2019/12/15 復活 |
5078の税目、約750億ドル 5% & 10%(追加&新規) 2019/9/1 計1717品目 2019/12/5 計3361品目予定 なお、9/11に除外品目発表 |
①②③ 9/11除外品目除き、据え置き 自動車・部品は停止 |
②160億ドル | 2018/8/23 25% | ||||
③600億ドル | A | 2018/9/24 5%
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B | 2018/9/24 10% | ||||
Bの一部 | 2019/6/1→ 20% | ||||
Bの一部 | → 25% |
中国の乗用車関税:
全体 対米国 当初 25% 25% 2018年5月 15%
↓15% 2018年7月 対米追加関税 25% 40% 2019年1月~3月 対米追加関税免除 15% 2019年4月1日より追加関税を一時停止 15% 2019年12月15日以降 復活+追加10%予定 50% 2019/12/13 停止 15%
これまでの経緯:
8/1 米国 中国からの輸入品3千億ドル分を対象とする追加関税「第4弾」を9月1日に発動
2019/8/2 トランプ大統領、9月1日に対中関税第4弾 ツイートで表明8/6 中国 「第4弾」の発動表明への制裁措置
2019/8/7 中国、米農産品の購入を一時停止8/13 米国 「第4弾」9/1発動、健康や安全、安全保障に関わる製品は除外し、1200億ドルに課税
特定品目(1600億ドル)の発動を12月15日に先送り
2019/8/14 米の対中関税第4弾、スマホなど12月15日に先送り中国 米国原産の5078の税目、約750億ドル分の製品に対し、10%と5%の追加関税(9/1、12/15)
停止していた自動車向けの25%追加関税を2019年12月15日から復活
2019/8/26 中国、米国製品750億ドル分に追加関税8/23 米国 中国の報復への再報復
これまでに課している2500億ドル相当の中国製品に対する関税を10/1から現在の25%から30%に引き上げ
第4弾税率も10%→15%
2019/8/26 米国、中国の報復関税に更に対抗関税、米国企業に中国撤退を要求9/11 米国 2500億ドル分の中国製品に対する制裁関税の拡大を10月15日に先送りすると発表。 中国 対米追加関税対象商品の除外リスト第1弾、16品目を発表。
続いて、大豆や豚肉などの追加関税適用を除外するとともに、農産物を一定量購入することを決めた。
2019/9/16 中国、対米追加関税除外を拡大10/11 米国 10月15日に実施予定の2500億ドル分の中国製品に対する制裁関税の拡大は延期
2019/10/12 米中貿易協議 部分合意、対中関税引き上げ延期
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