英下院、離脱関連法案の基本方針を可決、来年1月8日に採決

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ジョンソン首相は12月20日、EUと合意した離脱協定案を国内法に反映する関連法案を提出した。 前回の法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも、来年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。

下院は12月20日、離脱関連法案の第二読会を行い、法案の基本方針を 359 対 234 で可決した。その後、日程を決める議事進行動議を 353 対 243で可決した。

この後、来年1月6日と7日に委員会審議が行われ、1月8日に第三読会で最終審議を行う。

与党保守党は今回の総選挙で過半数を得ており、来年1月31日の離脱は確実になったとみられる。

議会の法律審議は次の通り行われる。

一読会(First Reading 本会議で法律案の題名朗読
読会(Second Reading 本会議で法律案の基本方針審議(その後は、基本方針から外れる修正案は許されない)
議事進行動議Programme Motion その後の法律案審議の日程表決
委員会段階(Committee Stage 逐条審査
第三読会(Third Reading 本会議での法律案最終審議


10月の離脱関連法案の審議では、10月22日の
「第二読会」議案を329対299で可決した。 
しかし、
離脱関連法案を早期に成立させるために政府が提出した「議事進行動議」が308対322の僅差で否決された。
否決後、ジョンソン首相は立法手続きを中断した。

2019/10/23 Brexit の延期 濃厚に

その後、総選挙となり、今回の圧勝となった。

議席の推移と今回投票結果:

解散

2017/6/8
選挙
今回
解散前
今回
選挙
12/20
賛成 反対 棄権
保守党 330 317 298 365 353 10 2
民主統一党(NI) 8 10 10 8 7 1
(与党)

(327) (308)
労働党 232 262 243 202 6 162 32 2
スコットランド国民党(Scot) 56 35 35 47 45 2
自由民主党 8 12 20 11 11
独立党 1 0 0 1 1
独立グループ 0 24
Change UK 5 0
シンフェイン党(NI) 4 7 7 7 7
ブライドカムリ(Wales) 3 4 4 4 4
緑の党 1 1 1 1 1
社会民主労働党(NI) 3 0 0 2 2
北アイルランド同盟党(NI) 0 0 0 1 1
アルスター統一党(NI) 2 0 0 0
無所属 1 1 0 0
議長 1 1 1 1 1
空席 0 0 2 0
合計 650 650 650 650 359 234 52 5
議長と副議長(3人:未選任)、シンフェイン党(7人)は投票せず。
付記 2020/1/8 副議長が選任された。保守党から2人、労働党から1人となった。

ーーー

英議会下院は12月17日に再開し、初日慣例の議長選任(Sir Lindsay Hoyle が再任)と議員による宣誓が行われた。

総選挙前の10月31日にJohn Bercow下院議長が議員を引退した。後任の議長の選任は11月4日に行われ、労働党のSir Lindsay Hoyleが議長に選任された。

北アイルランド選出のシンフェイン党はこの国家元首(エリザベス2世)への宣誓を拒否し、登院をせず、議員歳費も受け取っていない。

Sir Lindsay Hoyle議長選任で、労働党は202議員となった。


エリザベス女王は12月19日にジョンソン政権の施政方針を読み上げた。

来年1月末のEU離脱が最優先課題とあらためて表明し、離脱の移行期間を延期しないことを明言した。

「EU離脱を達成することが優先課題であり、英国は1月末に離脱する」
「英国を優柔不断の締め付けから解放し、人々や企業の信認を取り戻す。離脱後の移行期間を2020年以降に延期する可能性を排除し、これ以上の躊躇や遅れを回避する」

また、離脱後はFTAに基づくEUとの将来関係を模索するとともに、EU以外の主要経済国とも通商交渉を開始するとした。
海外からの移民についてはポイント制を導入し、英国に寄与する熟練労働者を優遇するとしている。


移行期間の11カ月内にEUとのFTAを締結し、発効させなければ、2021年1月にEUとの間で関税が発生することとなり、合意なき離脱に似た事態が発生する。

移行期間は2020年12月末までとなっており、双方が合意すれば移行期間の延長を2年までも認められる。
但し、移行期間中は英国はEU法に従うと共に、EU予算への拠出も継続する。一方、加盟国としての権利は失う。

EUとしては、英国が簡単に、有利に離脱出来た場合、今後、離脱を希望する加盟国が出る可能性があるため、英国に厳しい姿勢を示している。

しかし、FTAが期間内に発効せず、合意なき離脱 に似た状況になることはEUにとっても好ましくない。
ジョンソン首相は、これを盾に、2020年中のFTA締結・発効をEUに求めるもの。

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