アステラス製薬、新しいCAR細胞療法のXyphos Biosciencesを買収

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アステラス製薬は12月26日、カリフォルニア州のXyphos Biosciences, Inc.の発行済み全株式を取得した。

2017年設立で、がん免疫治療技術を活用した医薬品の研究開発を行っており、従業員は7名。

買収手続完了時に1億2,000万ドル を支払った。
これと、開発の進捗に応じたマイルストン支払いを合わせ、最大で総額6億6,500万ドルが支払われる 。

Xyphos社が有するCAR(Chimeric Antigen Receptor:キメラ抗原受容体)細胞療法に関する技術プラットフォームであるACCELTM (Advanced Cellular Control through Engineered Ligands)とともに、がん免疫の分野をリードする優秀な人材を獲得する 。


CAR-T細胞治療は、患者由来の免疫細胞(T細胞)の遺伝子組み換えを行い、がん細胞を捉えて攻撃しやすくした上で患者の体内に戻す免疫細胞医療で、治療法が確立していない重篤・致死的な疾患に対する治療法として期待されている。

米国で2017年8月30日、再発・難治性(r/r)B 細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者を対象とするCAR-T療法の CTL019(商品名 Kymriah)が米FDAの承認を得た。


厚生労働省は2019年2月20日、薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会を開催し、ノバルティスファーマの「キムリア点滴静注」(チサゲンレクルユーセル)を
国内初のCAR-T細胞医療として正式承認することを了承した。2019年3月26日に承認 を取得した。

CAR-T細胞療法では日本では、第一三共が米国Gilead Scienceの大細胞型B細胞リンパ腫を対象に申請準備中であるほか、大塚製薬やセルジーンが開発を行っている。


2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承


Xyphos社独自のACCELTM技術は、タンパク工学により創製した受容体とリガンドタンパクの特異的な結合を利用した合成生物学的手法に基づいてい る。
受容体を発現させたナチュラルキラー(NK)細胞やT細胞といった免疫細胞(convertibleCAR®細胞)と、攻撃標的であるがん抗原を認識する抗体リガンドタンパクと融合させた抗体-リガンド融合タンパク(MicAbody)を患者に投与し、治療する技術 。

リガンド(ligand)とは、特定の受容体(receptor)に特異的に結合する物質

攻撃対象となるがん細胞の特徴に応じて、MicAbodyを取り替えたり、複数使用することで、convertibleCAR®細胞に異なるがん抗原や複数のがん抗原を認識させ、様々ながん細胞を攻撃することができ る。

また、MicAbodyの投与量を調節することで、免疫細胞による過剰な免疫反応を制御し、従来のCAR-T療法で見られるサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)の発生を抑制できることも期待される。

サイトカイン放出症候群CAR-T療法下で見られる有害事象の一つで、過剰な免疫反応により多量のサイトカイン (細胞から分泌される低分子のタンパク質)が放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することにより起こ る。
インフルエンザ様症状(発熱、悪心・悪寒、筋肉痛
等)重度の低血圧、頻脈、呼吸困難など症状が急激に進展すると死亡に至ることがあ る。

さらに、MicAbodyの抗体部分を別のタンパクに替えることにより、convertibleCAR®細胞の増殖や生存制御も可能にな る。

Xyphos社のconvertibleCAR®-T細胞のリードプログラムは現在、前臨床開発段階にあり、2021年に初めての臨床試験が行われる予定。

アステラス製薬では、自社子会社Universal Cells社が有するユニバーサルドナー細胞技術と組み合わせ、白血球型抗原(HLA)不適合による拒絶を抑えた多能性幹細胞からconvertibleCAR®細胞を作製することで、革新的CAR-細胞医療製品が創製できると期待してい る。

アステラス製薬は 米国のバイオベンチャーであるUniversal Cells Inc.を買収したと発表した。

Universal Cellsは、白血球型抗原(HLA)不適合による拒絶という細胞医療の課題を解決し、全ての患者の治療に用いることが可能な細胞医療製品を創製できる独自技術であるユニバーサルドナー細胞技術を有している。


独自に開発した遺伝子の編集技術を用いてHLA(自己と非自己を識別することができる細胞の表面抗原)の発現を調整する。
rAAV(recombinant adeno-associated virus)を用いてヒト胚性の幹細胞(ES細胞)の遺伝子編集を行なった結果として、免疫拒絶反応を免れる細胞を作製できた。

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