2018年6月7日にBayerによるMonsanto買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。
2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認
原告 | 陪審員 | 裁判官判断 | ||
1 | 校庭の管理人 | カリフォルニア 2018/8/10 | Superior Court 2018/10/23 | |
損害賠償 | 39百万ドル | 39百万ドル | ||
懲罰的損害賠償 | 250百万ドル | 39百万ドル | ||
2 | Edwin Hardeman | カリフォルニア 2019/3/27 | 地裁 2019/7/16 | |
損害賠償 | 527万ドル | 527万ドル | ||
懲罰的損害賠償 | 75百万ドル | 20百万ドル 被害に対して15倍もというのは違憲 |
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3 | Pilliod 夫妻 | カリフォルニア 2019/5/13 | Superior Court 2019/7/25 | |
損害賠償 | 55百万ドル | 17 百万ドル | ||
懲罰的賠償 | 20億ドル | 69百万ドル 陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反 |
現在、上の2番目の裁判の控訴審がサンフランシスコで行われている。
元の裁判では、裁判官は懲罰的賠償は高すぎるとして大幅に減額したが、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断については否定せず、有罪にした。
控訴裁でBayerは、Roundupが癌の原因ではないとし、無罪を主張した。
米EPAと司法省は12月20日、friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。
このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。
EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こし、一審の裁判官もこれを認めたもの。
州法に基づき、連邦法でのラベルを否定した形となっている。
EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。
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背景は以下の通り。
2015年3月にWHOの下部組織である国際がん研究機関(IARC)が、Roundupの有効成分であるglyphosate をグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類した。グループ2Aは、「ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合」である。
しかし、この判断は米国EPAやEU、豪州、ニュージーランド、ドイツ、日本、カナダなど各国の関係省庁の判断と異なる。
EPAは2017年12月、glyphosateは"not likely to be carcinogenic to humans"との判断を再確認した。
しかしながら、カリフォルニア州では上記IARCの判断に基づき、glyphosateを「カリフォルニアで発癌性があると知られる」"Prop 65" chemicals のリストに含めた。そして、 glyphosateを含む製品には警告ラベルを記載することを求めた。
プロポジション65(Prop 65)は、正式名称を「1986年安全飲料水および有害物質施行法」といい、1986年11月の環境投票活動として有権者によって制定された。
カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、癌、先天異常または他の生殖害を引き起こすことが知られている化学物質から保護することを目的としている。
この結果、裁判では発癌性の警告がラベルになかったとして有罪判決につながった。
しかし、EPAは本判決後の本年8月、glyphosateを含む製品を登録している全社に手紙を送り、glyphosateはヒトへの発癌性はないとの判断に基づき、glyphosate製品ラベルにProp 65 の発癌性警告を載せることは「誤りで、ミスリーディングである」とした。
・法律では、農薬の "misbranding"は禁止されており、農薬のラベルはEPAの承認が必要である。
・EPAとしては、「誤りで、ミスリーディングである」発癌性警告を含んだglyphosate製品のラベルは承認しない。そのような警告はラベルから外す必要がある。
・連邦裁判所は既にカリフォルニア州がProp 65 labeling requirementを求めることを禁止している。(Nat'l Ass'n of Wheat Growers v. Zeise)
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