HOYA、東芝子会社に敵対的TOB 

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HOYAは12月13日、東芝子会社の半導体製造装置メーカーのニューフレアテクノロジーのTOBを実施すると発表した。1株12,900円でのTOBで、最大1477億円を投じて全株の取得を目指す。


TOBの買付予定数の下限を
7,634,000株(66.67%)と設定しており、東芝デバイス&ストレージが応募することが必要条件となる。


ニューフレアテクノロジーの大株主は次の通り。(2019/9/30)

東芝デバイス&ストレージ 52.35% 東芝子会社
東芝機械 15.78% 東芝が売却、グループから外れる。2020/4に芝浦機械に改称

一方、親会社の東芝は12月13日、上場子会社4社のうち、POSレジ世界首位の東芝テックを除く3社、発電設備の東芝プラントシステム、船舶や産業向けの電機システムを手掛ける西芝電機と、ニューフレアテクノロジー に対しTOBを実施すると発表した。
総額は約2000億円。完全子会社化することで、少数株主との利益相反の可能性を回避し、経営資源の相互活用や意思決定の迅速化につなげる。

付記

東芝プラントシステムと西芝電機に対するTOBは成立した。
東芝プラントシステム
は持株が95.28%、西芝電機は92.68%となるが、今後、残る株式を取得して完全子会社化する。

なお、東芝は12月23日、ニューフレアテクノロジーのTOBを2020年1月16日まで延長すると発表した。株主に両社の提案の検討期間を設けるため、ニューフレアが東芝にTOB期間の延長を要請した。

付記

東芝機械は1月15日、東芝によるニューフレアテクノロジーのTOBに応募すると発表した。

東芝はHOYAの提案に応じないと決めており、HOYAのTOBが成立する可能性はなくなった。このため、東芝機械は東芝によるTOB(HOYAの提示価格より安い)に応募しても、株主から訴訟を起こされる恐れがなくなったと判断した模様。

付記

東芝は1月17日、ニューフレアテクノロジーに対するTOBが成立したと発表した。
東芝は従来からニューフレア株の52.4%を保有していたが、TOB後の保有割合は84.66%になる。

HOYAも同日、TOBを実施しないと発表した。


東芝はニューフレアが手掛ける製造装置の基幹部品を製造しており、完全子会社化することで研究開発が機動的にできると判断した。

東芝のニューフレアTOB価格は11,900円で、買い付け期間は2019年11月14日から12月25日となっている。
(12月12日の終値は11,930円、13日は13,330円)


これに対し、HOYAは1,000円高い12,900円でのTOBで、東芝(東芝デバイス&ストレージ)によるTOBが成立していないことを条件にした。 2020年4月のTOB開始を目指す。

東芝側はこれに応じない構えで、敵対的な争奪戦に発展する可能性がある。

東芝はTOBの成立条件として14.27%を下限に設定している(これで保有株が2/3を超えることとなる)。
東芝機械が応じれば、この時点でTOBは成立し、その後は株式売り渡し請求や株式併合などの手段で完全子会社とし、上場廃止となる。しかし、この可能性は低い。

東芝機械は1938年に芝浦製作所(東芝)が出資・設立した老舗のグループ企業だった。

東芝は2017年3月2日、20%超を出資する東芝機械の株式を売却すると発表した。当時、原子力発電事業の巨額損失で揺らいだ財務の立て直しのため、事業や保有株の売却を急いでいた。

3月3日の取引開始前に東芝機械が東京証券取引所の立会外取引を通じて自社株買いを実施し、東芝所有株を買い受けた。

2020年4月からは、社名から「東芝」を外し、芝浦機械に改称する。同社のブランドは「SHIBAURA」である

現在の東芝機械の筆頭株主は、村上世彰氏が事実上率いるファンドのオフィスサポートで、自社で5.93%、共同保有分を含め9.19%を保有する。

村上氏は「東芝機械は、今のまま東芝のTOBに応じるなんてことはしないはずだ」とコメントした。

証券会社幹部も「このまま東芝機械が価格が低い方の東芝のTOBに応じたら、東芝機械自身が株主代表訴訟を起こされるリスクがある」と指摘する。

今後、東芝が買い取り価格を引き上げ、HOYAとの間で争奪戦となる可能性がある。

逆に、東芝が路線変更する可能性も噂されている。ニューフレアを完全子会社化すると約650億円の出費となるのに対し、HOYAのTOBに応じれば700億円以上の現金が手に入る ことになる。

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ニューフレアテクノロジーは2002年に東芝機械から半導体装置事業を継承して創業した。

半導体デバイスの性能と生産性向上の源泉である微細化の要となるフォトマスク に高精度な回路パターンを形成する電子ビームマスク描画装置に関して30年以上の開発の歴史を持つ。

また、フォトマスクの仕上がりを検査するマスク検査装置を開発し、さらに、今後電気自動車など用途の拡大が期待される パワー半導体向けのエピタキシャル成長装置も開発から実用化の段階に入っている。

HOYAは半導体ウエハーに回路を描く原版となる「ブランクス」と呼ぶガラス製品で7割以上のシェアを握るほか、この表面に微細な回路を形成した「フォトマスク」も提供している。

回路を描画する装置を手掛けるニューフレアを取り込むことで半導体関連の事業を強化したい考え で、2017年以降、ニューフレアに対して複数回、提携を打診していたという。

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