京都大学が実施するヒトのiPS細胞のストック事業を巡り、竹本科学技術担当相は12月6日の閣議後記者会見で「2022年度まで支援を続ける」と述べた。当初の計画通り年間十数億円が補助される見通しとなった。
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山中教授は2012年5月のフォーラムで、iPS細胞による再生医療について「2020年まで全力疾走で研究を進め、新しい医学を確立させたい」と述べ、iPS細胞をタイプ別に準備する「iPS細胞ストック」の構築事業に取り組む方針も明らかにした。
iPS作成には1人当たり1千万円程度がかかり、作製に半年が必要で急場の間に合わない。このため、再生医療用に研究機関や企業に提供するため、厳重に品質管理されたiPS細胞ストックを構築するもの。
2012/7/26 「iPS細胞ストック構築」で赤十字と提携
ストック事業は、文部科学省の再生医療に関するプログラムの一環として2013年に始まった。
当初は140種類のiPS細胞をそろえて日本人の9割をカバーする目標が設定されたが、その後、供給が始まった4種類と、拒絶反応が起きにくいようゲノム編集した6種類のiPS細胞で日本人のほぼ全員をカバーする方針に転換した。
国はこの事業を10年間は支援することにし、昨年度は13億円、これまでに計90億円以上を投じてきた。
山中所長らは2018年12月に、高品質な細胞を大量培養するストック事業を研究や教育に主眼を置く大学で両立させるのは困難だとして、事業を外部移管する方針を表明。文科省の専門部会が2019年8月に了承した。
京都大は2019年9月6日、「ストック事業」を移管するための一般財団法人「京都大学iPS細胞研究財団」を設立した。合わせて内閣府に対し、税制優遇を受けられる公益財団法人になるための申請をした。
財団では、大学から独立してiPS細胞の製造や品質評価、保管・管理などを担い、備蓄細胞の販売収入などで事業を継続できる体制を整える。
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今秋に入り、京都大のiPS細胞の備蓄事業について、政府が、年約10億円を投じてきた予算を打ち切る可能性を京大側に伝えた。
ノーベル賞受賞から7年たって基礎研究から事業化の段階になってきたことや、企業ニーズとの違いが浮き彫りになったことが背景にある。
iPS細胞から移植用の細胞をつくる企業の側は、複数の型を使うことに慎重なことが明らかになった。
免疫抑制剤の進歩もあり、1種類のiPS細胞だけを使い、免疫抑制剤で拒絶反応を抑える方が事業として成り立ちやすいとの判断がある。
iPS細胞からつくった細胞が臨床研究で目や神経の難病患者に移植されるようになったことで、政府は事業化の段階に入りつつあると判断、医療政策を担う内閣官房の幹部らが、来年度から研究開発費を打ち切る可能性を山中教授に伝えたという。
付記
一部報道で、和泉洋人首相補佐官と大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官(兼内閣官房健康・医療戦略室次長)が密室の場で国費投入の廃止を突如打ち出していたと報じられた。
事業の責任者を務める山中教授は「研究に専念させてほしい」と訴えるなど、打ち切り反対の論陣を展開した。
細胞の製造、培養する部屋は14あり、年15~16億円の予算が必要になるという。
企業に運営費を負担してもらうという考え方もあるが、山中教授は「コストを単純計算すると1億円以上かかるが、この段階でお金を回収することが目標ではない。今は企業の競争力を上げ、できるだけたくさんの企業に成功してもらうことが目標だ」と している。「(企業が育てば)将来的に雇用や税収という形で国にも返ってくる。患者にもより早く新しい医療が届く。先々の投資という意味で、国の支援は続けて欲しい」と述べた。
自民党と公明党も、竹本科技相に宛て現状のまま支援を継続するように提言を出した。
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