日立、三菱重工業とのJVの損失負担をめぐる紛争で和解、火力発電事業から撤退

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日立製作所は12月18日、日立と三菱重工業火力発電システム事業を統合したJVの三菱日立パワーシステムズが取り組南アフリカ共和国のボイラー建設プロジェクトの承継関して、和解が成立した と発表した。

和解に至るまでの経緯:

三菱重工業と日立製作所は2014年2月に両社の火力発電所のインフラ事業を統合し、三菱重工業 65%、日立製作所 35%出資で、三菱日立パワーシステムズを設立した。

三菱日立パワーシステムズが承継した日立受注事業で問題が生じた。

日立は2007年から2008年にかけて、南アの電力会社 Eskom から、同社が建設するMedupi 発電所および Kusile発電所向けに各6基、計12基の石炭火力発電プラント用ボイラー設備を総額約5,700億円で受注した。しかし、1基目の運転開始が当初予定の2012年から2015年にずれ込むなど工期は大幅に遅れ 、損失膨らんだ。設計の見直しなどで今も完工していない。

この事業を三菱日立パワーシステムズが引き継ぐための契約では、

・効力発生日より前の事象に起因する偶発債務及び同日時点において既に発生済みの請求権については日立が責任を持ち、
・効力発生日以降の事業遂行については三菱日立パワーシステムズが責任を持つことを前提に、
・効力発生日時点に遡ったプロジェクト工程と収支見積の精緻化を行い、それに基づき最終譲渡価格を決定し、暫定価格との差額を調整する旨が合意されている。

三菱重工は、分割効力発生日時点において既に損失が見込まれたプロジェクトであり、受注条件などに問題があったとして、三菱日立パワーシステムズ発足後に発生した損失も日立が負担すべきだと主張し 、2016年3月に約3,790億円の請求を行った。

日立は同年4月に、契約に基づく法的根拠に欠けるため請求に応じられない旨を回答した。

三菱重工は、2017年3月には請求額を約7,634億円に増やした。

その後両社で協議してきたが、まとまらなかったとして三菱重工は7月31日、第三者に解決を委ねる仲裁の手続きを、日本商事仲裁協会に申し立てたと発表した。

2017/2/13 三菱重工と日立、南アの火力発電プラント工事で争い

両社は仲裁手続きと並行して協議を続けてきたが、今回、下記の通り和解に至った。

1) 日立は三菱日立パワーシステムズの日立所有株式全て(保有比率35%)を 三菱重工業に引き渡し 、火力発電事業から撤退する。

2) 日立は、三菱重工業に対し、2000億円の賠償金を支払う。
  日立の
三菱日立パワーシステムズの子会社に対する債権を700億円で三菱重工業に譲渡する。
  これらを相殺し、差引1,300億円を三菱重工業に支払う。

3) 三菱重工業は株式と現金の受領後、仲裁請求を取り下げる。


日立は2020年3月決算で特別損失として3,780億円を計上すると発表した。

和解金 -2,000億円
債権譲渡 700億円
差引現金支払 -1,300億円
JV 株式等 -2,480億円
差引合計 -3,780億円


債権を700億円で譲渡し、和解金と相殺するため、現金支払いは1300億円で正しい。
但し、700億円の債権を700億円で譲渡するとすれば、この分の損益はゼロで、和解金の2000億円と株式譲渡損の合計の4,480億円の損失となる。

現金支払い分の1300億円を損失にする場合、既に評価減して簿価をゼロとしている債権を700億円で譲渡する必要がある。

恐らくそうと思われるが、今回発表では不明。

発表のとおりであれば、結果的には、2016年3月に三菱重工業が請求し、日立が拒否した金額の支払いで決着したこととなる。

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