米下院「ウイグル人権法案」可決

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米下院は12月3日、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人弾圧をめぐり、中国政府の高官らに制裁を科すよう トランプ大統領に求める「2019年ウイグル法案(Uighur Act of 2019)」を賛成407、反対1で可決した。

上院では9月11日に 新疆ウイグル自治区におけるトルコ系イスラム教徒に対する重大な人権侵害を非難し、中国の内外でこれらの少数民族に対する恣意的な拘禁、拷問、嫌がらせの終了を求める超党派法案 が満場一致で可決されているが、下院案はこれよりも厳しい内容。

下院案は上院に送付された。再度可決されれば大統領に送られる。

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香港人権・民主主義法案については、11月に上下両院でほぼ満場一致で可決され、大統領に送られた。

中国との貿易協議を抱えるトランプ大統領は、
香港の人権尊重と習氏との個人的関係を「両立させたい」と述べ、悩んだが、上院共和党への配慮で11月27日に署名し、法律となった。(拒否しても、上下院の2/3の賛成で覆すことができるため、法律になることは確実であった。)

中国は12月2日、対抗措置として、アメリカ軍の艦船が香港に寄港することを拒否するとともに、アメリカの複数のNGOに制裁を科すと発表した。

2019/11/25 米議会、香港人権法案を可決 及び 付記

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下院の「ウイグル人権法案」では、中国当局が2014年以来、テロ対策を名目に新疆ウイグル自治区でウイグル族らの弾圧を強化したと指摘。「再教育」施設に多数を収容、信教の自由を否定し、拷問などを実施していると強調した。

①大統領に対し、イスラム教徒への弾圧を非難し、新疆ウイグル自治区の北西部にある大規模な収容施設の閉鎖を呼び掛けることを求め、
②大統領に、法成立後120日以内に弾圧に関与した当局者のリストを議会に提出し、Global Magnitsky Actに基づき制裁を科すよう要求(同法は査証の発給停止や米国内の資産凍結の根拠となる)、
③ポンペオ国務長官に対し、自治区の再教育・強制労働施設に収容されている人数を推計するなど、弾圧の実態を報告するよう要求、
④顔・声認証技術など、個人の監視に利用可能な製品の中国への輸出も事実上禁止している。

Global Magnitsky Actは、ロシアのMagnitsky弁護士 が、ロシアの国営企業の不正を暴露して投獄され、暴力を受け続けて獄中死したことから、「弁護士の死とロシアにおける人権侵害に関わった全ての者に制裁を科す」として2012年に成立した。2016年以降、グローバルに適用される。


中国外務省は12月4日、法案可決は「内政干渉だ」として「強烈な憤慨と断固とした反対」を表明する報道官談話を発表した。

中国の過激派の根絶に向けた取り組みとテロ対策に対するいわれのない中傷で、中国政府の新疆統治政策に対する悪意に満ちた攻撃だと批判した。

「新疆問題は人権、民族、宗教問題ではなく、テロや国家の分裂にどう対抗するかという問題だ」とし、自治区政府によるテロ取り締まりは「新疆の各民族の広い支持を得ており、世界の反テロの取り組みにも貢献している」と主張した。


「香港人権・民主主義法」に続き米中関係の新たな火種となりそうだ。

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