米野党・民主党のペロシ下院議長は12月5日、トランプ大統領を弾劾訴追する方針を正式に表明した。
「大統領の行動は深刻な合衆国憲法違反だ。大統領はまたもや自らの利益のために選挙を腐敗させようとしており、我々には行動以外の選択肢は残されていない」と述べ、弾劾の根拠や理由などを記した決議案の作成をJerrold Nadler下院司法委員長(民主)に指示した。月内にこの決議案を下院本会議で採決する構え。
これに先立ち、トランプ大統領はツイッターで、「何もしない、crazy になった」民主党を批判、上院での弾劾裁判で否決するので、民主党は速やかに訴追を行うべきだと書き込んだ。
上院では共和党が過半数を占めており、2/3の弾劾賛成は無理と見られている。
The Do Nothing Democrats had a historically bad day yesterday in the House.
They have no Impeachment case and are demeaning our Country.
But nothing matters to them, they have gone crazy.Therefore I say, if you are going to impeach me, do it now, fast, so we can have a fair trial in the Senate, and so that our Country can get back to business.
We will have Schiff, the Bidens, Pelosi and many more testify, and will reveal, for the first time, how corrupt our system really is.I was elected to "Clean the Swamp," and that's what I am doing!
弾劾するなら、今、速やかにやれ。上院でフェアな弾劾裁判をやれる。我国が仕事に戻れるように。
Schiff下院情報委員長、Biden前副大統領親子、Pelosi 下院議長その他に証言させ、このシステムがいかに腐敗したものかを明らかにする。
私は問題解決のために大統領にえらばれた。それをやっているのだ!The Do Nothing, Radical Left Democrats have just announced that they are going to seek to Impeach me over NOTHING.
They already gave up on the ridiculous Mueller "stuff," so now they hang their hats on two totally appropriate (perfect) phone calls with the Ukrainian President.民主党はなにもしていない私を弾劾しようとしている。
2016年米大統領選へのロシアの介入疑惑に関するMueller特別検察官の馬鹿げた捜査報告書を使うのを諦め、ウクライナ大統領との全く問題ない電話会談を 理由にしている。This will mean that the beyond important and seldom used act of Impeachment will be used routinely to attack future Presidents.
That is not what our Founders had in mind. The good thing is that the Republicans have NEVER been more united. We will win!将来の大統領を常時 攻撃するために弾劾が使われることになる。これは建国者たちが考えたことではない。
共和党はこれまでになく まとまっている。我々は勝つ!
弾劾調査を進める下院司法委員会は弾劾訴追状の作成に向けて公聴会を12月9日に開く予定で、代理人を出席させるかどうか、大統領に回答を求めていた。
ホワイトハウスは12月6日、今後も公聴会などに政権関係者を出席させない考えを伝えた。「弾劾調査はまったく根拠が無く、適正手続きや公正さの基本原則を犯している。即刻、この弾劾調査を終わらせ、公聴会で時間を無駄にするべきではない」と述べ、調査に協力しない考えを示した。そのうえで、「弾劾したいなら、今すぐやれ。そうすれば、上院でフェアな弾劾裁判を開くことができる」という大統領の言葉を引用し、挑発した。
下院本会議では、民主党が過半数を占めるため (共和党 197、民主党 233、無所属 1)、決議案は可決される公算が大きい。
可決案が下院で可決されれば、上院で弾劾裁判が始まる。
弾劾には2/3 の賛成が必要だが、上院は共和党53、民主党系 47のため、弾劾には上院から20名の賛成が必要である。今のところ上院はまとまっており、否決される可能性が高い。
トランプ大統領が弾劾訴追されれば、1868年の第17代のAndrew Johnson、1998年の第42代のClinton 両大統領に続いて米国史上3人目の大統領となる。前の2人はいずれも、上院で2/3に達せず、弾劾を免れている。
Johnson大統領は、連邦政府による南部再建で南部人に寛大な政策をとったとみられ、そのせいで共和党急進派のメンバーと馬が合わず、政敵である陸軍長官スタントンを罷免したことからThe Tenure Law(政府高官が在職中は罷免を免れる法律)を破ったという口実で弾劾裁判にかけられた。
上院での弾劾決議の採決では賛成35票・反対19票で2/3に1票足りず、大統領の座を保った。
Clinton大統領は、「不適切な関係を持った」Monica Lewinsky事件で大統領の「品格」を問われ たが、「不適切な関係」では、さすがに弾劾にはならない。
大統領は大陪審での判事の前での宣誓証言の場で疑惑を全面否定した。前職のアーカンソー州知事時代のセクハラ疑惑で州職員の女性から訴えられていたが、その宣誓証言の場でたまたま、この実習生ジョーンズとの関係を聞かれ、うその供述をした。司法委員会は4つの訴因を挙げた。第1の訴因は大陪審への偽証、第2の訴因は司法手続きの妨害、第3がジョーンズ訴訟での偽証、第4は下院司法委員会から大統領に送られた81の質問の一部に対する虚偽の回答である。
下院本会議での審議では、第1の訴因については228対206、第2の訴因については221対212の僅差であった。残りの訴因は否決された。上院の弾劾裁判では、第1訴因については45対55、第2訴因では50対50で、いずれも弾劾賛成が2/3に達せず、大統領罷免は免れた。
なお、Nixon大統領のWatergate事件では、下院司法委員会は第1の弾劾(司法妨害)で27票対11票、第2の弾劾(権力の乱用)で28票対10票で、第3の弾劾(議会に対する侮辱)で21対17で弾劾勧告を可決、下院本会議での弾劾決議が出る前に大統領を辞任した。
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