韓国の基礎科学研究院多次元炭素材料研究団のRodney Ruoff団長〔蔚山科学技術院 自然科学部特訓教授〕が率いる研究チームは12月10日、簡単な工程でグラフェンを0.5ナノメートルのダイヤモンド薄膜(diamane)に変身させることに成功したと発表した。
ダイヤモンドを2次元の平面形態として製作することができれば、ダイヤモンドの優れた物性を半導体素子をはじめ電気・機械・化学などの多分野に幅広く利用することができる。
研究結果は国際学術誌 Nature Nanotechnology電子版に掲載された。
シリコンや炭化ケイ素、窒化ガリウムといった半導体素材と比べ、ダイヤモンドは絶縁耐圧や熱伝導率といった物理特性に優れており、究極の半導体になると言われているが、その実用化は技術的に実現不可能と思われてきた。近年、物質・材料研究機構、産業技術総合研究所などの日本の研究グループや日本国内の企業などで高品質ダイヤモンド薄膜の合成に成功するなど、基礎技術が発展がしてきている。
ダイヤモンドは熱伝導性が高く、硬くて熱や電気にも強いという特性があるため、たとえば電力制御系の半導体においてはシリコン製の半導体の約30分の1の薄さで同じ電圧に耐えられ、小型化できる。また、1万アンペア以上の大電流を扱える半導体素子や、温度が上がるほど発光効率が高まるLEDなども期待されている。
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グラフェンとダイヤモンドはともに炭素原子だけで構成されているが、原子の結合形態が異なる。
グラフェンは強度が高くて、熱と電気をよく伝えることはもちろん、2次元物質なので自由自在に曲がる。
反面、ダイヤモンドは熱伝導性と剛性に優れているが電気は通さず、簡単に曲がらない。
これまでグラフェンの結合構造に変化を与えて薄い超薄膜ダイヤモンド(Diamane) を合成しようとする研究が登場したがまだ商用化に至ることはできなかった。
結合構造を変化させる過程で非常に高い圧力が必要で、製造費用がかさむだけでなく、圧力が低くなれば再びグラフェンに戻るなど安定性を維持できなかった。
研究陣は2個のグラフェンが重なり合う構造の二層グラフェンで大気圧でも安定したダイアメインを世界で初めて合成した。
常温・低圧環境で化学的処理だけを経てダイアメインを合成できるため、高圧が必要だった既存の技術に比べて製造費用を大幅に軽減できるという長所もある。
「フッ素を注入する過程を通じてグラフェンの炭素結合をダイヤモンドのような結合形態に簡単に変え、欠陥も最小化した」としており、フッ素化過程を通じて合成したという意味で、「F-diamane」と命名した。
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なお、炭素原子を含む原料を分解し、炭素原子を組み上げてグラフェンを合成するボトムアップ合成法は、CVD法 (化学的気相合成法)、SiC (シリコンカーバイド)分解法に限定されていた。
熱化学反応のみを利用するCVD法やSiC分解法では、通常、高温の熱エネルギーが必要となる。
東北大学多元物質科学研究所、学際科学フロンティア研究所は12月11日、亜臨界水反応場を適用することで、電気分解によるグラフェン合成に世界で初めて成功したと発表した。
水熱電解法では、熱エネルギーに加えて電気エネルギーも併せて利用でき、新たな選択肢が加わった。
酢酸水溶液を封入し、昇温、昇圧した容器中の電極間に3.5 Vの電圧を印加することで、白金陰極表面にグラフェンを堆積させることが出来る。
酢酸以外にも蟻酸、エタノール、メタノールからも同様のグラフェン合成が出来る。
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