富士フイルム、日立の医療機器事業を買収

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日立製作所は12月18日、画像診断関連事業を富士フイルムに譲渡することを決定したと発表した。

日立は関連事業を新設の子会社 富士フィルムヘルスケアに移管し、同社の株すべてを富士フィルムに譲渡する。

分割する部門の事業内容 は、画像診断システム(CT、MRI、X線診断装置、超音波診断装置等)、電子カルテ等の研究開発・製造・販売・保守サービス で、この事業の2019年3月期売上高は 1,432億円 であった。

両社は事業価値を1,790億円 とすることで合意しており、最終的な株式譲渡価額は、純運転資本額 と純有利子負債額で調整し、確定する。

日立は連結決算 で事業再編等利益 約1,110億円を計上する 。

画像診断関連事業は、先進国では高齢化や慢性疾患の増加、新興国では経済成長に伴う医療水準の向上などのニーズがあり安定的な成長が見込まれている 。
一方で、業界再編の進展やグローバル競争の激化により、事業規模の拡大がますます重要になっている。

また、日立の場合、機器の単独販売が多く、営業利益率は低水準になっている。

本年8月の報道では、日立は画像診断機器事業を売却する方針で、売却先の選定に入っており、海外の投資ファンドなどが買収に関心を示している とされた。

今回、補完性の高い販売チャネルや画像処理などの優れた技術力を持つ富士フイルムに対象事業を譲渡することが、さらなる成長と競争力強化のために最適であると判断した。

売却する事業は、日立の子会社だった旧日立メディコ が手掛けるMRIとコンピューター断層撮影装置(CT)、さらにその子会社日立アロカメディカルが強みを持っていた超音波診断装置を中心とした画像診断機器事業である。

 日立メディコ:

1949年に日立製作所と紡織機械メーカー 6社の出資により東日本繊維機械として設立。

当初は紡織機械の販売にあたっていたが、日立の各種レントゲン機械を扱うようになり、1954年 に日立レントゲンに改称した。
1969年に大阪レントゲン製作所を合併、医療機器部門に本格的に乗り出し,1973年社名を日立メディコに変更した。
X線装置,コンピュータ断層撮影装置,磁気共鳴画像 MRI装置などを独自に開発した。 

 アロカメディカル:

超音波診断装置、骨粗鬆症診断装置、放射線測定装置、バイオ関連装置、検体検査装置、分注装置などを手がける。
特に超音波診断装置については、世界で初めて製品化したパイオニアとして知られ、広く海外にも展開した。

日立は2016年にヘルスケア事業強化に向け、日立メディコおよび日立アロカメディカルの製造部門以外の部門を日立に 吸収し、製造部門は日立メディコを存続会社として合併し、日立ヘルスケア・マニュファクチャリングとした。

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日立製作所は急速に構造改革を進めている。

このたび、中核子会社である化学大手、日立化成の売却を巡り、昭和電工に買収の優先交渉権を与えることを決めた。

昭和電工は12月18日、日立化成を株式公開買い付け(TOB)により買収すると発表した。買付代金は総額9640億円となる。
日立は所有する51.29%全てを譲渡する。譲渡金額は4,940億円。

2019/12/2 日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ

火力発電システム事業 では、別記の記事の通り、三菱重工業 とのJVの三菱日立パワーシステムズ にかかわる紛争をこのたび解決し、同社の株式をすべて三菱重工に譲渡し、この事業から撤退する。

今後は、収益重視の選択と集中を加速し、インフラやITに経営資源を集中し、海外勢との競争に勝つ体制づくりを急ぐ。

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調査会社によると、画像診断機器ではドイツのシーメンスがシェア23.1%でトップ、GEが21.8%で2位、オランダのフィリップスが20.5%で、キャノン(9.5%)、富士フィルム(5.5%)、日立(2.9%)などが続く。

富士フイルムは医療用画像管理システムでは世界シェアで首位(17.5%)に位置するが、MRIやCTといった医療機器を持っていなかった。

富士フイルムホールディングスは、日立の磁気共鳴画像装置(MRI)などの医療機器に富士フイルム独自の画像処理技術や人工知能(AI)などのソフトウエアを組み合わせ一括して提供し、海外大手3社を追い上げる。

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