イタリア、デジタル課税を導入、フランスに追随

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イタリア議会代議院(下院)は12月23日、2020年の予算案を賛成334、反対232で可決した。

このなかで、フランスに追随してデジタル課税の2020年1月1日導入を決めた。


世界での売上高が7億5000万ユーロ以上、イタリア国内で550万ユーロ以上の売り上げがある企業を対象に、デジタル収入に3%の税金を課す。

ネット広告や音楽のデジタル配信、クラウドコンピューティングなどを手がける企業が対象となる。

政府はデジタル課税で年間7億ユーロ程度の税収を見込んでいる。

グーグルやフェイスブックなど米IT大手は物理的な施設を持たずに、データのやりとりなどで稼ぐ。現在、オフィスや工場などの「恒久的施設」(Permanent Establishment ) がないと外国法人には法人税を原則課すことができない 。

このため、欧州や日本ではこれら各社の税負担が極端に低い。

欧州委員会は昨年3月21日、デジタル分野における課税に関する指令案を発表した。

その後、EUでは暫定的な税の適用について、議論を進めてきたが、税制の変更には全会一致の承認が必要となる。

EUのデジタル課税案には、低税率で米IT大手などを誘致してきたアイルランドなどが導入に猛反発し、また米国からの「報復」を警戒するドイツなども、国際的な課税ルール見直しの議論を見極めるべきだと早期導入に慎重な姿勢を崩さず、調整が難航した。

2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

フランス上院は7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

課税事業 (i) ユーザーが他のユーザーとコンタクトしたり、商品やサービスを購入するデジタルインターフェースの供与
(ii) フランスのユーザーに広告する業者にデジタルインターフェースでサービスを供与
課税対象企業 課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、
フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上
税率 対象売上高の3%
課税開始 2019/1/1に遡及
米通商代表部(USTR)は12月2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税を検討する。

2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討 

米国はイタリアに対しても報復措置をちらつかせている。

経済協力開発機構(OECD)もデジタル課税についての国際的なルール作りを進めており、2020年1月までの大枠合意を目指している が、ムニューシン米財務長官は12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。

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この動きに対し、アマゾンやグーグルは日本で法人税を支払うように変更した。

アマゾンは日本法人が2017年12月期と2018年12月期に、それぞれ約150億円の法人税を納付したとされる。

従来は、米国本社が日本の業者から購入、日本の需要家に販売する形をとっていた。売買差益は日本で非課税となる。

製品の倉庫への受け入れ、需要家への配送は日本子会社が受託し、受託料だけを収入として、少額の税金を納入していた。

現在は、日本法人が購入、販売する形に変更、売買差益は課税対象となった。


グーグルも、以前は日本の事業の大半はシンガポール法人が契約し、日本以外で売り上げを計上していた。
2019年4月からは、主力の広告事業で日本法人が日本国内の契約を結ぶことにした。

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今回、イタリアで2020年の予算案が議会で可決されたのは、大きな進展である。下院では予算案と政府の信任案との一体案として提出され、可決された。

昨年6月に発足したイタリアの「五つ星運動」と「同盟」の連立政権は、与党の「同盟」が内閣不信任案を提出し、崩壊の危機に瀕した。

2019/8/13 イタリア連立政権、崩壊の危機 

中道左派「民主党(PD)」とポピュリスト(大衆迎合主義者)政党「五つ星運動」は8月28日、新たな連立政権を樹立することで合意した。

コンテ首相は9月4日、「五つ星運動」と「民主党」の2党連立による組閣名簿をマッタレッラ大統領に提出、9月5日に新閣僚の就任宣誓式を行った。

両党は政策合意で、EUとの連携を打ち出した。連立政権は、次期総選挙が開かれる2023年まで続くこととなる。

今回の予算案の可決は両党の連立の結果である。上院では既に12月16日に承認されており、法として成立した。

主なポイント:

財政赤字目標 GDPの2.2% 

財政赤字問題については 2019/5/10 イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ

EUの財政規律の基本は、財政赤字の対GDP比 3%未満、公的債務残高の対GDP比率 60%未満である。 (公的債務残高は多くの国が基準を超えている。)

イタリアの公的債務残高は2018年の134.8%から、2019年には135.7%にアップする見込みで、2019年3QのイタリアのGDPは+0.1%に過ぎない。

付加価値税(VAT) 引き上げ凍結。 230億ユーロの歳入減、2021年に大幅引き上げが必要となる。

欧州委員会は付加価値税を2020年に予定通りひきあげ、財政規律を維持するよう促すが政権は慎重で、「別の税収確保の方法を考えたい」としている。

2018年予算安定化法案で2019年1月からの増税が定められていたが、2019年予算法において増税時期は先送りされ、2020年から実施すると定めている。

当初の税率の変更案  赤字は凍結

  現状 2019/1/1 2020/1/1 2021/1/1
標準税率 22% 24.2% 24.9% 25%
軽減税率 10% 11.5% 13%  

プラスチック税

2020年予算案には、プラスチック製品(ボトル、ポリ袋、トレイ、洗剤容器等々)に1kg当たり1ユーロの税を課す案が含まれた。

最終的に1kg当たり45セントに修正された。

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