ブラジルのBraskemは2019年11月、National Mining Agencyに対し、2019年5月から停止しているAlagoas 州Maceioの岩塩杭を永久に停止すると伝えた。
日本ではクロルアルカリはメキシコなどから輸入した工業塩からつくるが、米国やブラジルでは地下にある岩塩層に蒸気を吹き込んで回収した塩水を原料とする。
米国では塩水を回収した後の穴を原油の貯蔵などに使っている。
Shintech もルイジアナ州 Plaquemin に電解工場を持つが、工場近辺の土地に岩塩の採掘権を持ち、地下1800mから塩水を回収している。
Braskemはこの岩塩杭を1975年から使っているが、ブラジル地質調査室が、周辺の土地の陥没や建物のひび割れ、2018年3月の小規模地震を岩塩層からの塩水採掘に関連づけた報告を発表したため、2019年5月に停止した。岩塩層の上部の地盤が弱く、塩水の回収で地盤沈下が起こったとみられる。
合計35の井戸のうち、15の井戸の地域の400の家屋を空け、1500人を移転する。残りの20の井戸は監視を続ける。
Braskem側は被害を受けたのは約400の建物と、住民1500人としているが、Maceio市側は建物が9600、住民が4万人と主張している。
同社は、現地の現象と塩水採掘は無関係であり、今回の措置は岩塩鉱が住宅地にあることから予防的に行なうものだと述べた。
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Braskemはこのたび、連邦政府と州政府との間で、被害の補償として約667百万米ドルを支払うことで合意した。1月3日付の証券取引所への届け出で明らかになった。
このうち、420百万米ドルは約17000人への補償と移転費に充てられ、247百万米ドルは岩塩井戸の閉鎖に使われる。
Braskemでは、この合意はBraskemが問題の責任を全面的に認めたものではないとしており、今後も分析を続けるとしている。
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原料の岩塩採掘停止に伴い同地にあるクロルアルカリ工場(ブラジルに2つあるプラントのうち大きい方)とEDCプラント(ブラジル唯一)も停止している。
インフラの問題で工業塩の輸入ができないため、Braskemでは苛性ソーダとEDC(VCMの原料)を主に米国から輸入している。
同社では現在、クロルアルカリとEDCプラントの再開のため、近くのRio Grande do Norteから工業塩を輸送し、2020年上半期にもプラントを再開することを検討する。
近辺地域で新しく岩塩層の開発ができないか検討するが、井戸の設置とプラントまでの塩水輸送のパイプラインも必要で、時間がかかる。
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