2020/1/21 英国のEU離脱関連法案、上院で審議
先ず、1月20日に3件の修正案を可決した。
1) EU離脱後に英在住のEU市民に自動的に居住権を与えるとともに、居住権を証明する物理的な証書を交付する内容で、270対229の賛成多数で可決された。
政府の方針では、EU市民がブレグジット後に居住権を獲得するためには2021年6月までに内務省に申請手続きを行う必要があり、居住権の証明はオンラインでしか行われない。
2) 英裁判所のどの判決が欧州司法裁判所の判決より優先されるかについて、政府の決定権を排除するもの
3) 英国内のあらゆる裁判所の判決について、EUの判例に反することが可能かどうかを英最高裁判所の判断に委ねることとを可能にするもの
1月21日に問題の子供の難民の扱いに関する修正案が300対220の賛成で可決された。
親が難民の場合は子供を難民として入国を認めるが、子供が難民と認められた場合にその親を難民と認めないことが問題となった。
子供の頃ナチスから逃れて英国にきた Lord Dubs が修正案を提出した。
これに関し政府側は、そのような親子が再会できるようEUと協定を結ぶつもりだが、EU離脱法案には含めないとしている。
最後に5つ目の脱退通知をする前にスコットランドや北アイルランドの分権議会の同意も必要とするという修正案が可決された。
1998年の分権法では、分権議会の立法事項にも及ぶ立法をするときは、事前に分権議会の同意を得ることが確認され、それが以後慣行となった(Sewel conventionと呼ばれる)。
分権議会に移譲された立法権のなかにはEU法が関わるものもあり(農漁業や環境分野の立法など)、分権議会に対してEU法を遵守する義務を課している。
EU脱退となれば、1998年分権法のEU法遵守義務規定も廃止する必要がある。
下院では与党が多数を占めるため否決する予定で、法案が上院と下院を行ったり来たりする卓球戦(parliamentary ping-pong bout)となる可能性があった。
下院は1月22日、上院の修正案を否決した。
これを受け、上院は再度の修正を諦め(卓球戦をやらず)、EU離脱関連法案を原文のまま承認した。
1月23日にも女王の裁可(royal assent)を得て、正式に法律となる。
1月31日のEU離脱が確実となった。
ジョンソン首相は数日中にEU離脱協定に署名し、欧州理事会(EU首脳会議)とEUの行政執行機関、欧州委員会の首脳も1月24日にブリュッセルで署名する見通し。1月29日の欧州議会での正式承認で批准手続きが完了する。
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