JDI、アップル / シャープ連合に工場売却交渉

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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が、主力の白山工場を Appleと シャープへ売却する方向で交渉していると昨年末に報じられた。


白山工場は スマートフォン向け液晶パネルを製造する主力工場で、AppleのiPhone向けが中心だが、液晶パネルの販売不振で稼働が低迷したため、7月から生産を一時停止している。

2019年3月期の決算で、白山工場資産減損 747億円を計上。

6月12日開催の取締役会で、今後の需要の大幅回復の見込みが立たないためモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止 及び茂原工場後工程ラインの閉鎖を決議。

報道を受け、JDIは12月27日に以下のコメントを発表した。

白山工場の今後の取り扱いについては、あらゆる選択肢を検討しておりますが、現時点で決まったことはありません。
なお、上記選択肢を検討するにあたり、 現在、白山工場では生産設備及びインフラ設備等の状態を総点検しておりま す。

JDIは12月12日に、独立系投資顧問のいちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書を締結したと発表した 。

Suwaからの 出資が20191231日までに実施されなかった場合に、いちごトラストから800億円から900億円の資金調達を実施する旨の最終契約の締結に向けて協議を進めることを合意した。具体的な内容及び条件につ いては、今後両社協議の上決定する 。

付記 Suwaからの出資 は20191231日までに実施されなかった。JDIはいちごトラストとの協議を進める。

このなかで、Appleとみられる顧客企業に白山工場の設備を2億ドルで売却する案などについて、最終契約に向けた協議を進めると発表していた。

当該顧客との間で、当社によるいちごアセットグループからの400億円以上の資金調達の実施等を条件として、
当社顧客が
取引の支払条件の緩和を行う旨、及び
当社白山工場の生産装置の購入を通じて実施する可能性も含めて、当社による当社顧客からの200百万米ドルの資金調達を実施する旨の最終契約の締結に向けて協議することで合意いたしました。

2018/12/19 ジャパンディスプレイ、いちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書締結

この時点では白山工場の生産設備の売却であったが、Appleとシャープが工場全体を購入する話に切り替わったとみられる。

シャープはAppleのスマートフォン向けなど液晶パネルの販売が好調で、自社工場の稼働率が高まっている。

売却額は800億~900億円で交渉しているとされる。Appleとシャープの負担割合は固まっていない模様。

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JDIは2015年3月6日、石川県白山市に第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場を建設すると発表した。月産2万5000枚の能力で、投資額は1700億円。

新工場の建設はAppleからの増産依頼によるもので、投資資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。但し、Apple専用とせず、中国スマホメーカーなど他社へも供給する予定。

問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、たちまち返済原資に行き詰まる。
工場がApple専用であれば、それなりの条項が入れられたと思われるが、他社への供給もできるようにしたのが逆目に出る形となった。(Appleが減った分は他社に売ればよいとの言い訳ができる)

2019年のXR向け液晶の出荷量は、計画比で半減する見込みで、2月に入って主力の白山工場の稼働率は50%前後まで落ちている。これにより、2018年9月末に600億円あった現預金が1月に入って急激に減り始めたとされる。

2019/4/4 ジャパンディスプレイの動き

AppleはSuwaの中国投資家を通じて100百万ドルの出資を予定していたが、中国投資家が撤退した。

その後、上記の通り、取引の支払い条件の緩和と白山工場生産装置の購入を通じる可能性も含め、200百万ドルの供与の話を進めていた。


Appleからの前受け金は2019年9月末時点でなお約900億円残っており、返済負担がJDIの財務の重荷となっている。

仮に、Appleとシャープの連合に900億円で売却して、前受け金をAppleに返還すると、JDIには工場も現金も残らない。

結局は、Appleのためにつくった工場が、Appleからの注文が減ったため前受け金の返済ができず、Apple(とシャープ)に無償で取り上げられることとなる。

シャープは工場の買収に、Appleからの製品引取の約束を取り付けると思われる。 もし、Appleがシャープに対して製品引取を約束するのであれば、なぜJDIには約束しないのか、疑問が生じる。

JDIが最初の契約にTake or Pay 条項を入れなかったのがこの結果を生んだこととなる。

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