米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。
制裁関税での合意は以下の通り。
米国 | 2500億ドル分は25%の関税を維持 1200億ドル分は15%の関税を半分の7.5%に引き下げ(署名の30日後に) 12/15実施予定の1600億ドル分への15%追加課税を延期 |
中国 | 12/15実施予定の5%&10%追加関税を延期(自動車関税 25%+10% も延期 |
2019/12/16 米中貿易協議、第1段階で合意付記
米通商代表部(USTR)は1月21日、中国との貿易交渉を巡る「第1段階の合意」が2月14日に発効すると正式に明らかにした。同日付で約1200億ドル分の中国製品に対する制裁関税を現行の15%から7.5%に引き下げる。
付記
中国国務院関税税則委員会は2月6日、米国から輸入する約750億ドル分の製品の追加関税率について2月14日に引き下げると発表した。2019年9月に課した追加関税の税率を10%から5%に、5%から2.5%にそれぞれ引き下げる。
この時点では口頭での合意で、これから文書化して署名する段階であった。双方の発表には一致していない部分もあり、2019年5月には中国が(口頭で合意した)外国企業に対する技術移転強要を是正する法整備を拒否し、トランプ大統領が「中国は約束を破った」として追加関税を課す対中制裁の強化を決めた例もあり、実際に調印されるかどうか、不安もあった。
実際に中国側には追加関税が撤廃されなかったことへの不満があると報道された。
しかし、最終的に12月の合意のままで文書化され、署名された。
米通商代表部(USTR)は合意文書とFact Sheet を公表した。
Fact Sheet によると、合意は以下の7項目。
知財(IP) | 企業秘密、医薬関連知財、原産地表示、商標、模造品対策等の分野での多くの懸案事項 |
技術移転 | 中国は外国企業の中国進出や政府承認の取得等の見返りに技術移転を求める永年の慣行を止めることに同意。 技術移転、ライセンスは市場条件に基づく。 中国政府は外国の技術を取得するための海外投資支援をやめる。 |
農業 | 貿易の構造的障壁を取り除き、米国の食品、農業製品・海産物の輸出の大幅拡大をサポート 農業製品・海産物への非関税障壁を取り除く。 |
金融サービス | 幅広い金融サービス業者に対する永年の貿易・投資バリアを取り除く。 |
通貨 | 通貨切り下げや為替レートの目標設定をやめる。透明性、説明メカニズムを推進。 |
貿易拡大 | 中国は2年間で2000億ドル以上の財・サービスの輸入(2017年比で) 輸入増は、製造製品、食料、農業・海産物、エネルギー製品、サービスを含む。 2021年以降も数年間、同じ傾向を続け、米中貿易のリバランスに。 |
紛争解決 | 合意違反なら必要な措置を取る。 両国高官は定期協議を月1回開き、USTR代表と中国副首相も定期的に会談する。 (米政府高官は「中国が合意内容を守らなければ、制裁関税を再発動する」と明言) |
中国は米国からモノとサービスの輸入を2017年比で2年で2000億ドル増やすが、輸入拡大規模の内訳は下記の通り(億ドル)。
2020 2021 合計 工業品 329 448 777 農畜産品 125 195 320 LNGなど 185 339 524 サービス 128 251 379 合計 767 1,233 2,000
2017年の米国の中国向け財・サービスの輸出は合計 1,863億ドル(輸入は 5,235億ドル)
政府の購入額を協定で決めるなら分かるが、国全体の輸入増額(目標ではなく実額)を決めるのは極めて異常である。
国の輸入額は景気によっても増減するし、品質・価格などで購入元も変わる。品質や価格を保証せずに購入を強制するのはおかしい。
中国の総輸入額が増えなければ、他国からの輸入が減ることになる。
中国の劉鶴副首相は、輸入は市場原理に基づいて行われるため、今回の合意で中国に農産品を輸出する他の国に影響は及ばないとの考えを示した。
中国企業は消費者のニーズや市場の需給に基づいて米農産物を輸入するとし、「中国市場は今や国際市場の極めて需要な一部分となっている。いかなる国も好きなだけ中国に輸出できるわけではない。輸出品に競争力があることが必要となる」と述べた。
中国に本拠を置く穀物トレーダーは、「国有企業への輸入要請や割当制の導入など、ある程度の政府介入があるだろう」と述べた。
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今回は第一段階に過ぎず、米国は制裁関税第1~3弾(2500億ドル分)は25%の関税率を堅持し ている。
米国の対中制裁関税:
当初 | 8/23 発表 | 10/11 | 12/13 | ||
①~③ 2500億ドル |
① 340億ドル | 2018/7/6 25% | 2019/10/1 30%予定 (→10/15に延期) |
引き上げ延期 (25%維持) |
25%据え置き |
② 160億ドル | 2018/8/23 25% | ||||
③ 2000億ドル | 2018/9/24 10% | ||||
→2019/5/10 25% | |||||
④ 3000億ドル | 一般 1200億ドル | 2019/9/1 10% | 9/1 15% | → | 7.5%に引き下げ |
消費財 1600億ドル | 2019/12/15 10% | 12/15 15% 予定 | → | 発動見送り |
中国も産業補助金の見直しなど構造改革は拒んだままである。
米国は中国の Made In China 2025(中国製造2025)計画で、全ての政府補助金の廃止を求めている。
今回の第一段階合意分は中国が既に改善を進めている項目がほとんどである。
しかし、残る項目は中国が簡単に下りれるものではない。中国製造2025計画は国の将来を左右するものである。
難航は必至である。
トランプ大統領も、「早期に第2段階の交渉を始める」と述べつつ、「合意は11月の 大統領選挙後になるかもしれない」とも話す。
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