トランプ大統領の弾劾裁判が開廷

| コメント(0)

米上院で1月16日、トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判が開廷した。

既報 2020/1/13 トランプ大統領の弾劾手続き開始へ 

この日の手続きは儀礼的なもので、実際の弁論は21日から始まる。100人の上院議員全員が陪審員になって、「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追されたトランプ氏を罷免するかどうか裁く。

まず、弾劾管理人を率いるシフ下院情報委員長(民主党)が訴追決議を読み上げ、「トランプ大統領は弾劾裁判と、すべての公職資格の剝奪、そして罷免に値する」と述べた。

その後に裁判長を務めるロバーツ最高裁長官が宣誓を行い、続いて各議員が宣誓書に署名した。


ホワイトハウスの弁護団は1月18日、下院による弾劾訴追を「憲法違反」と批判し、無罪を訴える内容の準備書面を上院に提出した。 野党・民主党が主導した下院の弾劾訴追を「自由な選挙で大統領を選ぶ米国民の権利に対する危険な攻撃だ」と批判、「2016年大統領選の結果を覆そうとする違法な企てだ」と訴えた。

ウクライナへの軍事支援を凍結した背景として、ドイツなど欧州各国が公平な分担をしているかについて疑問があったとしている。
政敵のバイデン前副大統領親子の捜査をウクライナに求めたことについても、ウクライナの汚職対策への取り組みを重視していたと説明した。
いずれも違法性はなく、「権力乱用」にはあたらないと反論した。

大統領が下院の調査に協力しないよう政府職員に指示した「議会妨害」についても、行政府には秘密保持の権限があり、議会への妨害にはなりえないと主張した。

検察官役の下院代表委員7人も1月18日、上院に準備書面を提出した。

トランプ氏が軍事支援凍結などでウクライナに圧力をかけ、バイデン氏らの捜査をウクライナに求めたのは、「個人の政治的利益のために外国政府に米大統領選に介入するよう求めた」行為と断定 、「米国の民主的価値観と国家安全保障への損害を防ぐため、トランプ氏を有罪にして罷免すべきだ」と求めた。

新たな証人招致や証拠提出を認めるかなどを巡り、共和・民主両党の対立が19日も続いた。

トランプ米大統領は、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席するため、弾劾裁判の審理が上院で始まる21日にスイス入ったが、スピーチの後、帰国した。

共和党の McConnel上院院内総務が1月20日、裁判の進め方に関する決議案を提出した 。これは単純過半数で議決される。

検察官役の下院民主党議員団とトランプ氏の弁護団は、意見陳述の機会をそれぞれ24時間 ずつを与えられる。
午後1時から始め、1日12時間で2日間としたが、これでは休憩をいれると毎日翌朝2時までやる必要があり、与党からも反対が出たため、1月21日に各3日間とするよう修正された。

双方の意見陳述のあと、質疑応答が16時間行われる。

その後、証人尋問や新しい情報を検討するかどうかについて、4時間の議論のあと採決される。

証人尋問は過半数の賛成で実施される。上院の勢力は共和党53人、民主党47人のため、証人尋問には共和党から4人の賛成が必要となる。
穏健派議員のうち少なくとも4人は証人尋問を排除しない立場を示しており、可決される可能性はある。


焦点となるのはボルトン
前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の 証人招致である。共和党指導部は想定外の新疑惑が浮上して情勢が一変する事態を懸念する。

ボルトン氏は1月6日、「上院が証言を求める召喚状を出せば応じる」と表明した。

同氏はこれまで、議会証言に応じるかを裁判所に委ねるとしていた。下院での弾劾調査で民主党はボルトン氏に証言を要求したが、裁判所の最終判断に時間がかかるため証言を断念した。

対ロシア強硬派として知られるボルトン氏はロシアの脅威にさらされるウクライナ向け支援の継続を主張し、トランプ氏と一対一で面会して支援再開を促したとされる。
それに対する大統領の発言など、証言内容によってはトランプ氏に打撃になる可能性もある。

ーーー

なお、トランプ大統領がウクライナに政敵の捜査を進めるよう圧力をかける目的で、同国への支援を凍結させた問題で、米国の政府監査院(GAO)は1月16日、議会が承認したウクライナへの支援を留保したことが法律違反だと認定した。

GAOは、トランプ政権によるウクライナ支援の凍結について、「議会が立法した内容を大統領が自らの優先政策と置き換えることは、法の誠実な執行上、認められていない」と指摘した。

1974年制定の執行留保統制法(ICA)は、議会が決定した支援を政府が留保するのを違法としている。また、政府が支援を遅らせたり止めたりする場合は、事前に議会下院に通告しなければならないと定めている が、 トランプ政権は、この事前通告をしなかった。

ーーー

CNNテレビが1月20日に公表した世論調査(16~19日実施)では、トランプ氏の弾劾裁判について、「有罪で罷免されるべきだ」と回答した人は51%で、「無罪で罷免されるべきではない」の45%を上回った。

罷免には陪審員役を務める上院議員の3分の2の賛成が必要である。




コメントする

月別 アーカイブ