フランスのMacron 大統領は1月20日、米国などのIT大手を対象にフランスが独自導入した「デジタル課税」に米政府が対抗措置を検討している問題で、両政府が解決を探る協議を年内は継続することでトランプ米大統領と合意したと表明した。 電話会談で決めた。
フランス側が年末まで課税を凍結する見返りに、米側は報復関税を年内は発動しない。
米仏両国は、経済協力開発機構(OECD)で議論が進められているデジタル課税の国際ルールづくりで最終解決を目指す。
2020年末までにはOECDによって国際課税規範が改正される見込みで、それがフランス税法よりも優先される可能性が高い。国際課税規範改正に向けた協議は、140近い国が参加して1月末に開かれる会議で始まる。
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フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax 法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。
米通商代表部(USTR)は2019年12月2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税をを検討すると発表した。追加関税を課す対象として、スパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなどを含む品目リストの原案をFederal Register に提示した。
課税事業 (i) ユーザーが他のユーザーとコンタクトしたり、商品やサービスを購入するデジタルインターフェースの供与
(ii) フランスのユーザーに広告する業者にデジタルインターフェースでサービスを供与課税対象企業 課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、
フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上税率 対象売上高の3% 課税開始 2019/1/1に遡及
対象規模は米企業が被る損害に基づき算定した。
2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討
USTRは、フランスだけでなく、オーストリア、イタリア、トルコの調査に入るとしている。
オーストリアはオンライン広告の売上に5%課税する案を公表
イタリアは2020年からの3%課税を表明
トルコは7.5%課税の2020年中の施行を目指している。
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フランスが課税を延期した一方、英国のジャビド財務相は1月22日、ダボスの世界経済フォーラム年次総会の討論会で、「デジタル課税」を計画通り4月に導入する考えを示した。
独自課税は「一時的」とし、経済協力開発機構(OECD)で議論している国際的な合意が得られれば取りやめると説明した。
英国のハモンド財務相は2018年10月29日、大手IT企業を対象とする新たなデジタル税制を2020年4月から導入すると公表した。
IT企業が英国のユーザーから稼いだ収入に2%の税率を課す。
世界の売上高が年間5億ポンド(約720億円)以上の事業部門が新税の対象になる。
新税導入により年4億ポンド(約570億円)の税収を確保する。
英財務省関係者は「ベンチャーや起業家への投資を妨げる目的ではない。そのために対象企業の売上高に下限を設けた」と説明した。
2019/3/12 EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ
討論会に同席したムニューシン米財務長官は、英国が計画を取り下げないなら報復措置を取ると警告した。 「自動車会社への課税を検討する」とした。
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経済協力開発機構(OECD)は2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。10月17日からの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告し、2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。
一部の利益とそれに対する課税権を多国籍企業の市場がある国・地域に割り当てることを提案している。
対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
(採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。
通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。 超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税
「2020年までに合意に達することができなければ、各国が一方的措置を執るリスクが高まり、すでに脆弱なグローバル経済にさらにマイナスの影響を及ぼすことになる。それを座視するわけにはいかない」としている。
OECD案で合意に達することができるかどうか、注視される。
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