Corteva、殺虫剤クロルピリホスの生産停止を発表

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殺虫剤クロルピリホスの世界最大のメーカーのCorteva, Inc.は2月6日、子供の神経毒性が問題となっている有機リン系殺虫剤 chlorpyrifos について年末までに生産を停止すると発表した。
販売の減少(1990年代のピーク時の20%以下)を理由とし、"difficult decision"であったとしている。

Corteva, Inc.は2019年6月にDowDuPontから分離独立した。



クロルピリホスは有機りん系殺虫剤の有効成分(原体)で、1965年にEPAの承認を受け、農業用、家庭用、工業用として広く使用されていた。

Cortevaは米国で Lorsbanの製品名で販売するが、日本ではダーズバン等の製品名で販売されている。

神経系に直接有毒であり、昆虫と人間を含む動物を死にいたらしめる。皮膚接触・経口摂取・吸入の経路で急性毒性を発生させる。神経障害・生殖への影響・脳・行動への影響があるといわれており、特に大人より子供での毒性が強いことが知られている。

EPAは2000年に農薬を除く殺虫剤での使用と居室を有する建築物建材での使用を禁止した。

家庭や芝生・庭用途
既存の家屋でのシロアリ駆除用途
学校やデイケア・公園・病院・養護施設・歩行者専用商店街のような地域での使用 

日本でも、禁止されたクロルデンに代わるシロアリ駆除剤として広く使われていたが、シックハウス症候群の原因物質の一つと疑われ、2002年7 月の建築基準法の改正によって、本物質を添加した建材の使用は禁止された。

農薬使用に関しても市民社会から懸念の声が出続けたため、前オバマ政権時代の2015年10月にEPAは嘆願書を受け取り、農薬に使用されるクロルピリホス残留許容量基準を廃止し、農薬使用を全面禁止する提案をした。

しかし、EPAが提案の根拠とした疫学研究の計測手法に対して専門家から疑問が上がり、改めて信頼性の高い手法で計測をしたところ、EPAの根拠とは異なる結果が得られた。

トランプ政権スタート直後の2017年3月29日、EPAはクロルピリホス禁止を求める申請の拒否を公表した。2015年の提案が不確実な特定の疫学的研究の結果に基づいていたことを理由にした。

Scott Pruitt長官は、「人体や環境を保護しつつ、クロルピリホスに依存する米国農家数千人に対し規制の確定性を提供する必要がある。世界で最も広く普及している農薬を禁止しようとした前政権の動きを巻き戻し、結果ありきの議論ではなく意思決定科学に基づく判断に我々は回帰する」と述べた。

今回、Cortevaは販売減を理由に生産を停止する。

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Cortevaの生産停止の発表は、カリフォルニア州によるクロルピリホスの使用禁止の施行日に行われた。

カリフォルニア州では、アルファルファ、アーモンド、シトラス、綿、ブドウ、クルミなどの農作物に使われているが、州はは2019年5月8日、子どもや農業従事者、地域社会の健康被害を防ぐため、クロルピリホスの使用を禁止すると発表した。使用禁止を決めた州はハワイ、ニューヨークに続き3州目となる。 本年2月6日から施行される。

カリフォルニア州ではより安全な農薬への移行が進んでおり、クロルピリホスの使用量は2005年の200万ポンドから2016年の90万ポンドへと半減している。

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