神奈川県衛生研究所と理化学研究所は2月27日、COVID-19 ウイルスを30分以内に検出できる新技術を開発したと発表した。
現在、COVID-19 ウイルスへの感染の有無については、のどの粘液やたんからウイルスの遺伝物質を検出する「PCR検査」で調べている。
「PCR検査」は、DNAをその複製に関与するプライマー等を用いて大量に増幅させる方法で、ごく微量のDNAであっても検出が可能なため、病原体の検出検査に汎用される。ただ、機械にかけて遺伝物質の量を増やさなければならず、結果が出るまでに6時間程度が必要である。
神奈川県は平成28年度から神奈川県衛生研究所と理化学研究所による外来感染症の防疫に資する技術開発研究を支援しており、これまでの開発研究では、デングウイルス、ジカウイルス等の感染症を、理化学研究所 と㈱ダナフォームが共同開発したSmartAmp法を利用して検出する方法に取り組んできた。
SmartAmp法は、遺伝子を特異的に増幅して検出する簡便・迅速・安価な遺伝子検出技術で、既存のリアルタイムPCR装置をそのまま利用することができるとともに、PCR法のような温度の上下を必要としないため、増幅時間の短縮及びエネルギー消費量の削減が可能である。
SmartAmp法は等温核酸増幅法で、非対称なプライマーセットと鎖置換反応活性を持つDNAポリメラーゼによって等温条件下で核酸増幅を行う。
神奈川県衛生研究所は、新型コロナウイルスの3株を、ダイヤモンド・プリンセス号の乗船者の独立した3検体から分離することに成功し、これらの独立3株より精製したRNAのうち2株の全ゲノム解析を行った。
神奈川県衛生研究所と理化学研究所はこの試料を用いて、新型コロナウイルスを迅速かつ高感度に検出する研究用試薬を開発し、実際の検体で性能を確認した。
新型コロナウイルス感染症の検査法として現在使用されているリアルタイムPCR検査の方法との比較において、温度の上げ下げの必要がなく、一定温度による、より単純な工程で、より迅速、かつ、高感度で新型コロナウイルスの検出ができるとの実証結果が得られた。
PCR検査:
PCR法の反応1回で元の2倍の遺伝子ができるため、これを繰り返すことで増やして判定する。
SmartAmp法:
・ PCR のような複雑な温度制御を必要としない。67℃での反応のみ。
温度コントロールに大量のエネルギーを必要とせず、機器の小型化に最適。
・COVID-19のゲノムはRNAで、RNAから核酸増幅を行うには、逆転写反応(RNAからDNAを合成)が必要である。
PCRでは変性過程での逆転写酵素の失活が起こるので、反応ステップを分ける必要があるが、SmartAmp(等温増幅法)では反応ステップを分ける必要がなく、逆転写に続いてDNA増幅が連続的に起こる。
この結果、高速検出(10-30分)が可能となる。
・増幅の検出で陽性判定できるのでデータ解析がシンプル、PCRより高い検出特異性、高感度(PCR法と同等以上)などの特長を持つ。
神奈川県では、今回開発した新型コロナウイルスの迅速検出法のさらなる改良を行っていくとともに、SmartAmp法を利用した新型コロナウイルスの検出試薬に関する実証研究を、関係行政機関、研究機関、大学及び医療機関等と連携して開始することを予定している。
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