小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対

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小泉進次郎環境相は1月21日、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴えた。

計画について「理解が得られるものではなく、つくるのはおかしい」と異例の反対意見を表明した。日本以外の国の企業が建設を担当し、政府の輸出要件に反することを理由に挙げた。

問題となっているのはベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業で、概要は以下の通り。

計画:1,200MW(600MW×2基)の石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ハティン省ブンアン経済区内(既設のブンアン1石炭火力発電所の隣接地)


事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)

三菱商事主導のOneEnergy Ltd.が100%出資 (同社については下記)

総事業費:約22億米ドル

融資者:国際協力銀行と民間金融機関(下記)

設計・調達・建設(EPC)契約者:Energy China GPEC(中国)、GE(米)

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始

小泉環境相は21日の閣議後の会見で「ブンアン2」について、「日本がお金を出しているのに、結果的にプラントを作るのは中国やアメリカの企業だ。こういう実態はおかしい」と述べた。

環境相は、海外での石炭火力発電所の建設支援については、石炭を選ばざるをえない国にかぎり、日本の高効率の発電設備を導入するといった、いわゆる4要件があると指摘したうえで、「これまで、日本のプラントメーカーがやることだから公的支援を行う 。日本がやらなければ中国が席巻すると説明を受けてきたが、この一例に限って言えば造るのは中国と米国のメーカーだ。国民や国際社会から理解を得られない」と述べ、関係省庁に問題提起し議論していきたいという考えを示した。

「日本の政策を脱炭素化に資するように変えたい」とも強調した。


海外での石炭火力発電所の建設支援については、政府が2018年7月に策定した「エネルギー基本計画」の中で4つの要件をあげている。
 ▽エネルギーの安全保障と経済性の観点から、石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、
 ▽相手国から日本の高効率石炭火力発電への要請があった場合に行う。
 ▽相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、
 ▽原則として熱効率が高く二酸化炭素の排出が従来よりも少ない発電設備について、導入を支援する。

今回の計画では、日本が資金を負担し、建設は中国と米国の企業が行う。 日本の高効率石炭火力発電の技術移転につながらない。

ーーー

本事業については、事業者と融資者がどんどん抜けており、ほぼ日本企業による事業となる。但し、建設には日本企業は参加しない。

事業者=Vung Ang 2 Thermal Power Company(VAPCO)の出資者:

当初 2011/9 2012 2018/4
OneEnergy  下記 参照 30% 30% 48.45% 100%
現地 LILAMA 25% 撤退
Ree 冷蔵電気工業 23% 48% 51.55%
その他 22% 22%


OneEnergy:

当初出資者 三菱商事 40% / 中国電力 20% / 香港CLP 40%

2019年12月17日、香港CLPが新規の石炭火力発電事業からの撤退方針を発表し、ベトナムのブンアン2、ビンタン3計画からも撤退。

現在、三菱商事 40% / 中国電力 20% / 韓国電力公社(KEPCO)40%とすることで検討中。

民間金融機関の融資:

当初計画では、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行に加え、DBS銀行(シンガポール)、OCBC銀行(シンガポール)、スタンダードチャータード銀行(英)が加わっていた。

2019/11 OCBC銀行が脱石炭方針により撤退
2019/12 スタンダードチャータード銀行は、パリ協定の目標達成に整合させるためとして、融資を撤回
2020/1  DBS銀行が撤退。

これにより、残るのは日本の4行のみとなった。

三菱商事は2018年10月に「ESGデータブック」の改訂版を発表し、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を発表しているが、すでに開発に着手した案件(本件を含む)は例外としている。

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世界各国の環境NGO でつくる「気候行動ネットワーク」は、地球温暖化対策に後ろ向きな国に「化石賞」を贈っているが、日本は常連で、主たる理由は石炭火力発電である。

2017/11/14 日本の石炭火力支援への批判

2019年12月にスペインで開かれ、小泉環境相が出席したCOP25でも日本は化石賞を与えられた。

参加するにあたり、小泉環境相は石炭火力の輸出を原則認めない方針を打ちだそうとしたが、経済産業省や官邸との調整がつかず見送った。

演説で、「COP25までに、石炭政策については、新たな展開を生むには至らなかった。しかし、これだけは言いたい。私自身を含め、今以上の行動が必要と考える者が日本で増え続けている」と述べた。

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