前田道路は2月20日、同日開催の取締役会で1株当たり650円、総額約535億円の特別配当を行う旨の議案を4月14日に開催する臨時株主総会に付議することを決めたと発表した。従来から計画している今期配当(100円)とは別。
前田道路の筆頭株主の前田建設が1月21日から3月4日までの敵対的TOBにより発行済み株式数の51%取得を目指している。特別配当の基準日がTOBの決済の開始前のため、TOBに応じる株主にも払われる。
前田建設は1月20日に発表したTOBの条件の中で、前田道路が単独の純資産の10%に相当する額(203億円強)を配当する場合、「TOBを撤回する場合がある」と記している。
今回の配当総額は純資産の2割以上にあたる。豊富なキャッシュを減らし買収対象者としての魅力を落とす狙いがあ るが、発表では株主還元策としている。
同社では1月20日に前田建設が所有する2046万株(株価ベースで500億円相当)の自己株取得を発表していたが、これに代わるものとしている。
TOBを撤回するかどうかは前田建設が決められるが、大規模な配当を実施すると利益剰余金が減り 、想定した買収価格に見合う資産価値を得られなくなる。
付記
前田道路は2月27日、第二弾として道路舗装業首位のNIPPOと資本業務提携の協議を始めると発表した。5%程度の株式持ち合いも検討するという。
前田建設はこの日、3月4日としていた買付期間を3月12日まで延長した。
付記
前田建設は3月13日、前田道路へのTOBの結果を発表した。応募数が買付限度の上限を超え、前田道路への出資比率は25%から51%に上昇する。
付記
前田道路は4月14日、臨時株主総会を開き、総額535億円(1株650円)の特別配当を可決した。
前田建設が3月12日までにTOBによって、前田道路への出資比率を25%から51%に引き上げ子会社化したが、臨時総会は3月6日が基準日のため、前田建設の比率は25%で、同社の反対にかかわらず、過半数の株主が賛成した。臨時配当の受取も25%にとどまる。
前田道路の特別配当によって前田建設は連結ベースで400億円程度の資金を失うことになり、TOBのメリットが薄まる。これは当然、事前に予想されたことで、前田建設の判断には疑問がある。
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前田道路は道路舗装業などを手掛ける。
旧称は㈱高野組で、1930年にアスファルト舗装工事の草分けとして設立された。
1948年に高野建設に改称し、一般土木分野進出し業容の拡大を図ったが、1962年12月に会社更生法を申請、準大手ゼネコンの前田建設工業が事業管財人に就任した。
1964年に前田建設と業務提携し、1968年に前田道路㈱に改称した。
前田建設は前田道路の株式の24.68%を所有する筆頭株主で、前田道路を持分法適用会社にしている。
現在、前田道路は借金無しの優良企業である。現預金と有価証券で852億円を持つが、535億円の特別配当で一気に激減する。
2019年12月31日時点の財務数値(億円):
現預金 632 有価証券 220 借入金 0 ーーー
資本金 194 資本剰余金 233 利益剰余金 1,674 自己株式 -87
前田建設は1月20日、前田道路のTOBを発表した。持株比率 24.38% を51%とし、連結子会社にする。道路舗装事業の強化を目的としている。
買い付け期間 1月21日から3月4日まで TOB価格 3,950円(1月17日終値を5割上回る) 買付上限 2,181万株(既存の持株と合わせ 51%) 総額 862億円
しかし、前田道路は同時に、前田建設が保有する同社の株式を取得し、資本関係を解消することを提案することを決議した。
「事業のシナジーが見込めないほか、経営の独立性を確保するため」としている。
前田道路は1月24日にTOB反対を表明、前田建設のTOBは敵対的TOBとなった。
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日経ビジネスによると、本件の背後には物言う株主Oasis Managementの存在があるという。
香港の投資ファンドのOasis Managementは、ジャパンディスプレイに800億円の投資を交渉していたSuwa Investment Holdings のメンバーで、台湾2社と中国の嘉実基金管理の離脱後も最後まで残っていた。(最終的に2019年12月31日までに投資が実施されず、終了した。)
Oasis Managementは前田建設と前田道路の両社にそれぞれ5%未満の出資をしている。
同社は2019年6月の株主総会の前に前田道路に対し、自社株買いの実施、委員会等設置会社への移行、社外取締役の派遣などの要求を突きつけてきた。
これに対する対応で前田道路と前田建設の間ですれ違いが起こったという。
今回、前田建設によるTOBへの対抗で巨額の特別配当を行うこととなり、Oasis Managementは株主還元の目的を達することとなる。
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