丸紅は3月25日、2020年3月期の連結損益(株主帰属当期損益)の予想を2月5日時点の2000億円の黒字から1900億円の赤字に下方修正すると発表した。
最終赤字は不振事業の見直しを進めた2002年3月期以来18年ぶりで、赤字額は過去最大となる。
同社では、新型コロナウイルスの感染拡大について「これまでの金融危機や地政学的危機とは異なる。すぐに終息するとは考えられない」と指摘し、影響の長期化に懸念を示す一方で、「今の低迷する市況を全部織り込んだ」として、追加の減損の懸念はないと説明した。
新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行等に伴う、原油価格の急激な下落をはじめとした事業環境の悪化を踏まえて、各事業における保有資産の価値を見直し、下記の通り、減損損失を計上した。
前回予想 当期損益 2,000億円
石油・ガス開発事業 米国メキシコ湾の石油・ガス開発事業
Marubeni Oil & Gas (USA)-800億円 英領北海の石油・ガス開発事業
Marubeni North Sea-650億円 合計 -1,450億円 米国穀物事業 Gavilon穀物事業 -800億円 米国西海岸の穀物輸出事業 Archer Daniels MidlandとのJV -200億円 合計 -1,000億円 チリ銅事業 -600億円 海外電力及びインフラ関連事業 -400億円 その他 -250億円 一過性損失による悪化 計 -3,700億円 市況の悪化等による実態純利益の減益 -200億円 合計 -3,900億円
修正後 当期損益予想 -1,900億円
状況は下記の通り。
(1)石油・ガス開発事業における減損損失等
丸紅は100%出資のMarubeni Oil & Gas (USA) LLC.を通じて米国メキシコ湾の石油・ガス開発事業を行っている。
同じく100%出資のMarubeni North Sea Ltd.を通じて英領北海の石油・ガス開発事業を行っている。これについて、原油価格の18年ぶりの急激な下落に伴い、減損損失の計上、繰延税金資産の取り崩しを行った。
(2)米国穀物事業における減損損失
100%出資のGavilon Agriculture Investment, Inc.を通じて米国穀物事業を行っており、西海岸ではArcher Daniels MidlandとのJVで穀物輸出事業を行っている。
米中通商摩擦や北米の天候不順等の収益の押し下げ要因には回復の兆しが見られるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行に伴い、世界経済の不透明感が増している。
(3)チリ銅事業
丸紅は、チリにセンチネラ銅鉱山およびアントコヤ銅鉱山に30%、ロスペランブレス銅鉱山に9.21%出資しており、パートナーである世界有数の銅生産会社である英国・アントファガスタ社と保有銅鉱山の事業運営を行い、日本企業トップクラスの15万トンの持分権益銅量(銅地金換算)を保有している。
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同社は2015年3月期決算でも同様の減損損失を計上している。株主帰属当期損益は2200億円から1100億円(黒字)に修正した。(実績は1056億円の黒字)
内訳は次の通り。
減損損失 主な理由 損益 資源 北海の油ガス 5鉱区群 原油価格下落、開発コスト増加 -600億円 メキシコ湾沿岸(1鉱区) 原油価格下落 -175億円 米シェールオイル -175億円 チリ銅事業の減損損失 銅価格下落 -100億円 豪州石炭事業の減損損失 石炭価格下落 -50億円 非資源 Gavilon社「のれん」の減損損失 計画未達による計画見直し -500億円 合計 -1,600億円 税効果 400億円 損益合計 -1,200億円
2015/1/29 丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上
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今後、多くの資源関連企業で大きな減損損失計上が予想される。
更に株式評価損の計上も必要となる。
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