3月6日のOEPCプラスの減産協議決裂を受け、Saudi Aramcoは3月10日、4月の生産を現在の日量970万バレルから2割強引き上げて日量1,230万バレルにすると発表した。能力の限界近くまで生産を増やすとともに、国内外に備蓄する石油も放出する方針とみられる。Aramcoは国内やエジプト、沖縄などに戦略的に石油を備蓄している。
これを受け、ロシアのAlexander Novak エネルギー相は、ロシアは生産量を日量50万バレル増やす能力があると述べた。1,180万バレルになる。
サウジとロシアの生産量推移は下記の通り。(Bloomberg)
サウジ 現状 974万バレル→1,230万バレル(+255万バレル)
ロシア 現状 1,132万バレル→1,180万バレル(+ 50万バレル)
OPECプラスの2018年10月の生産量をベースとする現状の減産量は下記の通り、210万バレルである。
非OPECのうち、ロシアは30万バレルで、サウジ(89万バレル)とロシアを除くと、それ以外は91万バレルとなっている。
2019/1~ 2020/1~ サウジ自主 合計 OPEC 80万バレル 37万バレル 40万バレル 157万バレル 非OPEC 40万バレル 13万バレル 53万バレル 計 120万バレル 50万バレル 40万バレル 210万バレル うちサウジ 32.2万バレル 16.7万バレル 40万バレル 89万バレル
サウジとロシアが上記の増産(305万バレル)を行い、他のメンバー(OPEC 68万、非OPEC 23万)が減産をとりやめるとすると、現状から400万バレル弱の増産となる。
従来の減産210万バレルがなくなるだけでなく、ほぼ同量の更なる増産となる。
新型コロナウイルスで需要が大きく減る中での大増産で、全面的な価格戦争に突入する見込み。
3月9日にWTI原油は1バレル31.13ドルとなったが、たちまち20ドル台になると思われる。
米国のシェールオイルが狙いであるとの見方が強い。
OPECとロシアなどのOPECプラスは過去3年余り協調減産を実施し、原油価格の維持に努めてきた。しかし、枠組みの外にいる米国のシェール業界が増産を続けた結果、参加国にはシェアを奪われただけとの不満がある。
シェールオイルの採算ラインは、ダラス連銀の調査では平均50ドル前後とされ、多くの企業は30ドル台で採算割れとなる。油価が30ドル以下となれば、財務基盤の弱い中小企業も多いため、経営破綻するシェール業者が続出すると見られている。今後数年でシェール事業者の半分がデフォルトを起こすとの予測もある。
サウジの2020年度の予算の前提は1バレル60ドルと推定されている。これに対し、プーチン大統領によるとロシアの予算前提は北海ブレンドで年平均42.40ドルで、サウジと大きな差がある。
しかし、Aramcoの生産コストは2.8ドルとされており、他国と比較して圧倒的に低く、サウジとしてはシェア争いで勝つとみたと思われる。
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