福岡高裁、水俣病賠償訴訟、8人全員の訴え退ける

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胎児、幼児期にメチル水銀の汚染被害を受けたとして、未認定患者でつくる水俣病被害者互助会の8人が国と熊本県、原因企業チッソに計約3億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月13日、福岡高裁であった。


判決で、原告らが訴える水俣病特有の感覚障害についてメチル水銀曝露(摂取)との因果関係は明らかではないと判断、一審熊本地裁判決の国側敗訴部分を取り消し、8人全員の請求を退けた。

原告側は上告する方針。

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水俣病被害者互助会の8人が、国と県、原因企業チッソに総額2億1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は2014年3月31日、3人の損害を認め、被告に賠償を命じる判決を言い渡した。5人については棄却した。

重症で介護が必要な男性1人には、認定患者がチッソと交わす補償協定の慰謝料(1600万〜1800万円)を大きく超える額が認められた。

症状を訴えて県に水俣病認定申請をしたが、認められず棄却されたり、結論の出ていない9人が、2007年10月に提訴したもので、うち1人は2013年11月に国の公害健康被害補償不服審査会の逆転裁決を受けて熊本県から患者認定され、訴えを取り下げた。

一審判決の概要は下記の通り。

1人   (2013年11月 行政認定→訴え取り下げ) 1600万円 (チッソと補償協定)
1人 請求 1億円
(
全身の機能障害)
手足のしびれ(感覚障害)などの症状とメチル水銀との因果関係を認定
 ・同居家族や出生地周辺で認定患者がいること
 ・残されていた臍の緒のメチル水銀値など
1億500万円 介護費用や後遺症への慰謝料など
2人 請求
 各1600万円
(チッソ慰謝料
    最低額)
220万円 控訴する方針
440万円
5人 各症状は心因性や他の病気が原因の可能性が高い
 ・家族に認定患者がいないこと
 ・家族の水銀摂取状況など

棄却

原告は熊本、鹿児島両県に住む54~61歳の男女8人

いずれも胎児、幼児期に汚染された魚介類を多食したことで、手足先の感覚障害が生じたと主張していたが、一審は、主に同居家族に水俣病の行政認定患者がいるかどうかで原告を線引きした。

2014/4/3 熊本地裁、水俣病未認定患者3人への賠償を命令、5人は棄却

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控訴審では、「手足のしびれ」などの水俣病特有の症状が、チッソが流した水銀に汚染された魚介類を食べたことが原因と認められるかどうかが争点となっていた。

裁判長は水俣病への罹患について、医学的判断だけでなく、汚染魚介類の摂食状況や同居家族に認定患者がいるかどうかなど暴露歴や生活歴などを十分に考慮したかたちで、総合的に判断されるものとした。

また、「感覚障害などの症状が他の疾患による可能性がある場合、水俣病である可能性は減殺される」との枠組みを提示した。

そのうえで、原告の症状が「ほかの病気や障害の悪化によるものという可能性が存在する」と指摘し、原告はいずれも水俣病にかかっているとは認められないとした。

2004年に最高裁で勝訴した関西訴訟にも携わり、今回の控訴審で原告8人を水俣病と診断した阪南中央病院(大阪)の医師2人の診断結果は「(感覚障害の診断で)短時間に多数回の刺激を与えるなど、検査結果の正確性に対する配慮を欠いている」として採用しなかった。

一審で水俣病と認められ、1億500万円の賠償額が認められた原告については「高濃度のメチル水銀に暴露したかは疑問」とした上で、「出生時に仮死状態になったことなどによる脳性まひの可能性も否定できない」とした。

一審で水俣病と認められた原告団代表と他の1人の原告については、「高濃度のメチル水銀の暴露はあった」などと認めたが、手足の感覚障害などについて腰椎椎間板症など他の疾患によるものである可能性を指摘し、「自覚症状が水銀暴露の影響によるものとは認められない」とした。

原告団代表は、漁師だった祖母と両親は認定患者。祖父も劇症型水俣病とみられる症状で亡くなった。へその緒のメチル水銀値も示していた。

判決は、高濃度のメチル水銀摂取は認める一方、感覚障害は「アルコール性ニューロパチー(感覚運動障害型の末梢神経障害)の可能性がある」などと指摘、総合的に検討し「水俣病と認めるには足りない」と結論付けた。

判決のあと、原告団代表は「水俣病のことを何もわかっていない人が国に忖度したような判決で、不当だと感じる。上告したい」と述べ、弁護士は「1審で認められたことさえすべて否定する、国と県それに大企業を守るための判決だ。ひっくり返すべく、徹底的に取り組んでいきたい」と述べた。

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