EU、コロナウイルス対策で大幅金融緩和、「3%ルール」棚上げ

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欧州中央銀行(ECB)は3月18日夜、臨時の理事会を開き、新たに7500億ユーロの枠を設け、2020年末までに国債や社債などの資産を購入して資金供給することを決めた。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪化と金融市場の不安定化に対応する。市場の安定を通して緩和の効果が企業などに行き渡りやすくする。

ECBは3月12日の定例理事会で、従来の月200億ユーロペースでの資産の買い取りに加え、年末までに総額1200億ユーロの資産を購入する緩和策を決めた。

しかしその後も、イタリアの長期金利が大きく上昇するなど、金融市場が不安定になっていた。

3月18日の深夜の時間帯に異例の決定を行なった。ECBのラガルド総裁は「普通でないときには普通でない行動が必要になる」とツイッターに投稿した。

月200億ユーロの量的緩和(年間2400億ユーロ)、3月12日決定の1200億ユーロを加え、年間1兆1100億ユーロの緩和となる。

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欧州中央銀行(ECB)は2018年の9月13日の理事会で、毎月の債券買い入れ額を10月から月150億ユーロに半減させること、債券買い入れ策を年末までに終了させ、少なくとも2019年夏までは金利を過去最低水準にとどめることを決めた。

2018/9/22 欧州中銀、債券買い入れを年末で終了

しかし、欧州中央銀行(ECB)は2019年9月12日の定例理事会で、利下げや量的緩和の再開を含む包括的な追加金融緩和策の導入を決めた。
2018年末で終了していた量的緩和については、11月から月200億ユーロの資産購入規模で再開 した。

2019/9/13 欧州中銀、3年半ぶり利下げ、量的緩和再開 

欧州中央銀行(ECB)は2020年3月12日開いた理事会で、新型コロナウイルスの感染拡大で動揺する欧州経済を支えるため、月200億ユーロのペースで国債などの買い入れに加え、年末までに1200億ユーロの資産を追加購入すると決めた。

しかし金融市場の混乱が続いていることから、更なる拡大が必要と判断し、今回、2020年末までの期間限定で7500億ユーロの資産を追加購入すると決定した。

月200億ユーロの量的緩和(年間2400億ユーロ)、3月12日決定の1200億ユーロを加え、年間1兆1100億ユーロの緩和となる。

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EUのフォンデアライエン欧州委員長は3月20日、新型コロナウイルス感染拡大が経済危機を招くのを防ぐため、各国の財政赤字をGDPの3%以内に抑える規則を一時棚上げする例外条項の発動を発表した。

欧州債務危機を受け、2011年に「財政安定化・成長協定」に一般免責条項を設け、危機時には財政目標からの逸脱を容認するが、今回、初めてこれを適用する。

委員長は声明で「加盟国政府は予算を必要なだけ経済対策につぎ込める」と述べた。

各国は独自に経済対策を打ち始めている。

ドイツのメルケル政権は新規の国債発行をゼロにする健全財政路線を棚上げし、1500億ユーロ規模の追加予算を計上する方針を固めた。基本法(憲法)で均衡財政が義務付けされているが、例外規定を使う手続きに入る。

ユーロ圏には1997年6月締結の「財政安定化・成長協定(SGP:Stability and Growth Pact)」がある。

・ 単年度の財政赤字額の比率がGDP の 3% を上回ってはならない
 (ここでいう財政とは、中央政府に限らず、地方政府などのすべての公共財政の合計を指す)
・ 国債残高が GDP の60%を下回ること

その基準をクリアできず、EU経済財務相理事会が「過剰な赤字」と評価すれば赤字是正が勧告され、その後、赤字の解消に進展がないとみなされればペナルティー(罰金)が科される。

1990年代半ばにドイツの連邦財務相Theodor Waigelが提唱したもので、単一通貨圏において、一国が多額の借り入れを行い、中央銀行が通貨膨張の圧力にさらされ、インフレになった場合、1つの国の浪費によるコストを他のすべての国々に拡散して負担させることになり、同盟でも弱体化させるからである。

しかし、ドイツとフランスは、2002年以降3年連続で違反を続け、罰金の適用も停止させた。

フランスとドイツの圧力を受け、2005年3月の欧州理事会で見直しが行われ、財政赤字規律の条件を超えても、「小幅かつ一時的」な場合、経済成長がマイナスであれば過剰財政赤字とはみなされないことになった。

その後、ギリシャ問題が発生した。ギリシャの財政危機が世界的な株価急落を引き起こし、通貨ユーロの下落を招いた。

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

問題は南欧諸国に波及した。

PIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)から更にFISH諸国(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)が問題視された。

2013/3/5 ユーロ圏の不安、PIIGS からFISHに拡大 

現在は、イタリアとフランスが問題になっている。

イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たしていたが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めている。

2019/5/10 イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ 


フランスは2017年と2018年を除き、違反を続けている。2019年も -3.1%となった。フランスの赤字は一時的なものではないが、EUは罰金を課していない。


2018/12/20 フランスの2019年の財政赤字、GDP比3.2%に

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