積水化学と住友化学は2月27日、ゴミを原料としてポリオレフィンを製造する技術の社会実装に向けて協力関係を構築することに合意したと発表した。
積水化学は2017年12月、米国 LanzaTech Inc.と協力して、ごみ処理施設に収集された「ごみ」を一切分別することなく一酸化炭素と水素にガス化し、このガスを微生物により、熱・圧力を用いることなくエタノールに変換する生産技術の開発に成功した。
積水化学が「ゴミ」エタノールを生産、住友化学がこれを原料としたポリオレフィンを、それぞれ2022年度から試験的な生産を開始し、2025年度には本格上市を目指す。
日本で排出される可燃性ごみは、年間約6,000万トンで、そのエネルギー量はカロリー換算で約200兆kcalにも達する。これらの量は日本でプラスチック素材を生産するのに用いられる化石資源の量(年間約3,000万トン)およびカロリー換算したエネルギー量(約150兆kcal)に比べて大きいにもかかわらず、その再利用は一部に留まり、多くは焼却・埋立処分されている。雑多・不均質であり、含まれる成分・組成の変動が大きいというゴミの工業原料としての扱いにくさが、その再利用を阻んできた。
両社の協力によって、ゴミを原料としてポリオレフィンを製造するサーキュラーエコノミーを確立し、新たな化石資源の使用量を削減すると同時に、ごみ焼却時に発生するCO2排出量や廃プラスチックを削減する。
付記
積水化学は4月16日、同社とLanzaTechが共同開発した、微生物触媒を活用して可燃性ごみをエタノールに変換する技術の実証事業の実施、および事業展開を行うことを目的として、㈱INCJ(産業革新機構から2018年9月に新設分割)との間で合弁会社「積水バイオリファイナリー」を設立したと発表した。
まず、岩手県久慈市に実証プラントを新設し、2021 年度末に稼働を開始、実証事業を行う。
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LanzaTech Inc. は米国のスタートアップ企業で、製鉄所や製油所などの排ガスからエタノールを製造する世界で唯一のガス発酵技術を開発した。
排ガスやゴミのCO、CO2、H2 をバクテリアを使ってエタノールに変換する。
技術の詳細説明:https://www.energy.gov/sites/prod/files/2017/07/f35/BETO_2017WTE-Workshop_SeanSimpson-LanzaTech.pdf
クロストリジウム属バクテリアは、土壌内部や生物の腸内などの酸素濃度が低い環境に生息する偏性嫌気性菌であり、酸素存在下では増殖できない。
後にイスラエル初代大統領となる ハイム・ワイツマンによりデンプンから発酵によってアセトン・ブタノール生産が可能になったが、この発酵に用いられたのもクロストリジウム属細菌である。
第一次世界大戦中は燃料や火薬の原材料として破砕したトウモロコシからアセトンを生産していた。この発酵生産法は1950年代まで、アセトンやブタノールの主な生産法であった。
製鉄所の排ガス利用では既に2工場で商業生産を行っている。
立地 社名 完成 エタノール能力 北京 Shougang LanzaTech New Energy Science & Technology
(中国首鋼集団とLanzaTechのJV)2017 16M gallons/y ベルギー Gent ArcelorMittal 2018 21M gallons/y
LanzaTechはエタノールからバイオジェット燃料を生成する触媒技術も確立している。 バイオジェット燃料は国際標準機関の認定を受けている。
全日空は2019年6月、この技術により2021年以降に米国で製造・供給を予定するバイオジェット燃料の購入について合意した。
将来、「排ガス」を原料としたバイオジェット燃料の安定的な調達を目指すとしている。
LanzaTechは各社と提携して、事業の拡大を図っている。
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