「人工光合成」実用化へ本格実験

| コメント(0)

日本経済新聞は3月7日、三菱ケミカルやTOTOなどが、太陽光を活用して水と二酸化炭素(CO2)から化学製品を生成する人工光合成の実用化に向け、2020年度内に屋外実験を始めると報じた。

「人工光合成化学プロセス技術研究組合」が進めているもので、人工光合成は、植物が太陽光を受けて水とCO2から酸素と糖を作る反応をまねている。
水槽に光触媒を塗布したパネルを沈め、水素を取り出す。CO2と合成させてプラスチック原料などの化学製品をつくる。

屋内での実験で成果を得たことから、2020年度に数億円を投じて縦横10メートルの大型のパネルを屋外に設置。太陽光を利用し、環境負荷やコストを低減させて運用できるかを検証する。

2030年度以降の商用化時には光触媒を塗布したパネルの総面積1平方キロメートルとする。 (日本のオレフィン生産量の20%250万トンを人工光合成プロセスに置換えたとすると、)年間約870万トンのCO2を削減できると試算する。
2017年当時の日本のCO2の年間排出量の0.7%に相当するという。

人工光合成化学プロセス技術研究組合(略称:ARPChem)は2012年10月に設立された。

組合員:国際石油開発帝石、住友化学、ファインセラミックスセンター、富士フィルム、三井化学、三菱ケミカル、TOTO

目的 :太陽光の下で、
     ①光触媒による水の分解で水素/酸素を製造し、
     ②分離膜を用いて水素を完全に分離し、
     ③合成触媒を使用して水素とCO2から低級オレフィンを製造する
     人工光合成型の化学プロセスを確立し、化石資源からの脱却や資源問題・環境問題の解決を目指す。


担当: :プロジェクトリーダーは三菱ケミカルの瀬戸山氏
 ソーラー水素等の製造(光触媒関連):国際石油開発帝石、富士フィルム、三井化学、三菱ケミカル、TOTO
 水素分離膜関連:三菱ケミカル、ファインセラミックスセンター
 基幹化学品への合成触媒等:三菱ケミカル、住友化学

ーーー

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2019年7月、東京大学や信州大学などと共同で、世界で初めて、可視光で水を水素と酸素に分解する酸硫化物光触媒を開発し たと発表した。


この光触媒はY2Ti2O5S2という酸硫化物半導体で構成されており、波長640nm以下の太陽光を吸収して水を分解でき る。

酸硫化物半導体材料は、次世代の光触媒材料として有望視されていたが、水中での光照射下で光触媒材料自身が分解しやすいという問題があ った。
酸硫化物光触媒を用いて実際に水を分解した事例は、今回が世界初となる。

波長600nm近辺は太陽光で最も強度が高い波長域のため、効率的なエネルギー活用が期待される。

太陽光の強度のピークは主に可視光領域(400nm~800nm)にあるため)、光触媒がこの波長域の光を吸収して水を分解できれば、効率よく太陽光のエネルギーを利用でき る。

しかし、従来の光触媒は、吸収波長が主に紫外光領域(400nm以下)に限られるものが多く、可視光領域から近赤外光領域の光を利用できるように、光触媒の吸収波長を長波長化することが課題の一つ だった。


今回開発した触媒は微粒子状のため、将来、大面積の光触媒シートを作る上で、スプレー塗布法などの簡便な工程を適用しやすいというメリットもある。

この光触媒は水中に微粒子として分散することで、波長640nm以下の太陽光、および疑似太陽光を吸収して水を分解する。



ーーー

光触媒による水の分解の原理は下記の通り。


電子が通常存在する領域(価電子帯)と電子が自由に動いて電気を伝えることができる領域(伝導帯)との間にエネルギーのギャップ(バンドギャップ)が存在するため、通常は電気を通さない。


固体光触媒
(通常は粉末状)にバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯へと励起され、価電子帯にはホールが生じる。

のとき、一定条件下で、価電子帯で水が酸化されて酸素が生成し、伝導帯 で電子により水が還元されて水素が生成 する。つまり、光触媒のバンドギャップの位置が水の酸化還元電位を挟む位置にあれば、その光触媒は水を完全分解できるポテンシャルをも つ。


http://www.hess.jp/Search/data/33-03-101.pdf

------------------------------

過去のデータは下記から利用できます。

ブログ バックナンバー目次

データベース

ブログ & データベース専用検索

Google
www.knak.jp を検索

コメントする

月別 アーカイブ