トランプ大統領、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策を発表

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WHOのテドロス事務局長は3月11日、「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と述べ、各国に対して対策の強化を訴えた。

「過去の2週間で中国以外での感染者数は、13倍に増え、国の数は3倍になった。今後、数日、数週間後には感染者数と死者数、そして感染が確認された国の数は、さらに増えると予想する」と述べ、感染が今後も拡大するとの見通しを示した。

トランプ米大統領は3月11日夜、ホワイトハウスから国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策を発表した。

概要は次の通り。

1) 欧州からの渡航禁止

 EUは予防措置を怠り、中国や他の危険国からの旅行を制限しなかった。

米国保健福祉省は1月31日、緊急事態を宣言、過去14日間以内に中国に渡航した外国人の入国を拒否した。

 この結果、米国での新しいクラスターは欧州からの旅行者により始まった。
 新しく患者が米国に入るのを防ぐため、3月13日から30日間、欧州からの全ての入国を禁止する。

対象は、「シェンゲン協定」に加盟する26か国をアメリカ入国の14日前までに訪れた人。
シェンゲン協定非加盟の英国は禁止対象外。
昨年3月の1か月間に航空機でアメリカに渡航した人の数は、合わせて152万人以上に上る。

適切な検査を受けた米国人は対象外となる。

付記 米国は3月16日深夜から英国とアイルランドも追加すると発表した英国とアイルランドから帰国する米国人は入国できるが、特定の空港に限定する。

人だけではなく、貨物の受け入れも停止する

演説では「貨物の受け入れも」としたが、その後、ツイッターで、「人を停止させるもので、物資ではない」と書き込み、物資の輸入は禁止対象にならないと強調した。

Hoping to get the payroll tax cut approved by both Republicans and Democrats,
and please remember, very important for all countries & businesses to know that trade will in no way be affected by the 30-day restriction on travel from Europe.
The restriction stops people not goods

 なお、中国や韓国(実際はイラン)については状況を見極め、改善があれば措置を見直す。

2) 医療費

 保険業界と話し合い、コロナウイルス治療費の自己負担金を無くすこと、保険をこの治療に適用すること、驚くほどの治療費請求を無くすことで合意した。

3) 対策予算

 CDCや他の政府機関のウイルス対応、ワクチン製造、治療、医療品の配達等のため、83億ドルの予算の法律を成立させた。

4) 追加の指令

 中小企業庁にコロナウイルスの影響を受けた企業への融資を指示した。被害を受けた州への低利融資を行う。議会に500億ドルの予算増を求める。

 財務省に対し、納税延期を認めるよう指示した。無利子、無罰則である。これにより2000億ドルの流動性を生む。

5) 議会に対し、直ちに給与税を免除するよう求めた。(下記)
  (詳細について米議会と調整に入っており、この日の演説では中身を明らかにしなかった。)


米国民を守るために必要な措置をとることを躊躇しない。米国の福祉を常に第一にしている。」

付記 シェンゲン協定加盟国は下記の通り。

これまでのEU加盟国28カ国のうち、英国とアイルランドは適用除外(英国は「国境管理は国家主権の中核」と主張)、キプロス、ブルガリア、ルーマニア、クロアチアはいろいろな理由で未参加で、差引22カ国。EU以外では、 EFTAのアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの4か国が参加で、合計26カ国。

  詳細:https://www.knak.jp/blog/2017-3-2.htm#eu-rome

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上記 5) の給与税は問題が多い。

トランプ米政権は3月10日、新型コロナウイルスによる景気不安に対処するため、給与税(Payroll Tax)の年内免除を軸とした大型減税を米議会に提案した。

大統領は共和党の議会指導部と会談し、減税案の早期成立を求めた。

給与税は年間の税収が1兆ドルを超え、全歳入の3割を超える。税制の立案・決定権を持つ連邦議会には慎重論が根強い。野党・民主党にはトランプ大統領の再選戦略とも映り、実現するかどうか不明。

民主党の反応:

給与税免除は、病欠で給与が払われない労働者や職を失ったものには助けにならない。

対策には、病欠の有給化、コロナウイルスの広範な無料テスト、支払い可能な治療、便乗値上げ禁止、失業保険の拡張などを含む必要がある。(Pelosi 下院議長)

給与税(Payroll Tax) は、個人所得税とは別に、Social Securityや Medicareの財源として従業員と企業が同額を納入するもので、
 給与($137,700 まで)に対し、
 Social Security向けには、従業員と企業がそれぞれ 6.2%、合計12.4%
 Medicare向けには、それぞれ1.45%、合計2.9%で、
 合わせて、従業員、企業がそれぞれ7.65%、合計 15.3%となっている。

個人事業者の場合は、Social Security向けには12.4%、Medicare向けには2.9%となっている。

昨年度の実績で、Social Security分が9,140 億ドル、Medicare分が2,780億ドルで、他に失業保険が410億ドルとなっている。


2011年と2012年に、Obama大統領が金融危機後の景気対策として、Social Security向けの従業員分を6.2%から4.2%に引き下げている。(企業分と合わせ 10.4%になる。)


Payroll Tax の税率推移(Wikipedia)


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