WHO、新型コロナウイルスによる肺炎に関する調査報告書公表

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世界保健機関(WHO)と中国の合同専門家チームは2月29日、新型コロナウイルスによる肺炎に関する調査報告書を公表した。

Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)


WHOが派遣した各国の専門家や中国の保健当局の専門家らによるチームが現地で調査にあたり、2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析している。


COVID-19ウイルス:人畜共通ウイルスで、ゲノムの系統学分析で保菌動物はコウモリと見られる。
         しかし、中間宿主が何かは分かっていない。

付記
別のコロナウイルスであるSARSの最初の患者は2002年に広東省で確認されたが、このウイルスはキクガシラ コウモリから他の動物を経由して人間に感染したと考えられる。今回も同様の経緯でないかと見られている。


患者の状況:

2020年2月20日現在、中国では累積で75,465の症例が報告されている。

武漢の例は下図の通りで、1月10日から22日まで増加し、23日から27日までは横ばい、その後は2月1日を除き、減少している。
武漢のある大病院では、患者は1月末の500件/日がピークで、2月央には平均50件に減っている。


患者内訳:

2020年2月20日時点で報告された55,924の検査室確認症例のうち、湖北省が77%。
年齢の中央値は51歳で、大部分(77.8%)は30-69歳となっている。
男性は51.1%。

子どもの感染例は少なく、症状も比較的軽い。19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっていて、重症化する人はごくわずかである。
子どもの感染の多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかった。調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかった。

症状:

非特異的であり、病気の症状は無症候性から重度の肺炎と死亡にまで及ぶ。

55924症例に基づく典型的な徴候と症状には、発熱(87.9%)、乾いた咳(67.7%)、疲労(38.1%)、痰が出る(33.4%)、息切れ( 18.6%)、のどの痛み(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛または関節痛(14.8%)、悪寒(11.4%)、悪心または嘔吐(5.0%)、鼻づまり(4.8%)、下痢(3.7% )、喀血(0.9%)、結膜充血(0.8%)。

CFR(致命率 特定の疾病に罹患した母集団のうち死亡する割合

55,924の検査室確認患者のうち2,114人が死亡している(致命率 3.78%)。

CFR(致命率)は武漢では5.8%、中国の他の地域では 0.7%。

全体的なCFRはアウトブレイクの初期段階で高く(1月1日から10日までに症状が発現した症例では全国で 17.3%)、2月1日以降に症状が発現した患者では経時的に0.7%に低下した。ケアの標準がアウトブレイクの過程で進化したと見ている。

CFRは年齢とともに増加し、80歳以上の人の中で最も高い死亡率を示した(CFR 21.9%)。
CFRは、男性で4.7%、女性で2.8%で男性が高い。
併存疾患がないと報告した患者のCFRは1.4%であったが、併存疾患のある患者の割合ははるかに高く、心血管疾患のある患者では13.2%、糖尿病では9.2%、高血圧では8.4%、慢性呼吸器疾患では8.0%、がん患者では7.6%であった。


病状別のCFR  線の太さは割合を示す。

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