アビガン投与で重症患者6割、軽中等症患者9割が改善

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4月18日開催の日本感染症学会のWeb特別シンポジウムで、藤田医科大学微生物学講座・感染症科の土井洋平教授がアビガン投与の迅速観察研究の結果を報告した。

研究は、日本医療開発研究機構の研究開発課題で、全国約200医療機関が参加し、中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的に実施された。
オンラインサーベイ形式で基礎疾患や肺炎の重症度、転帰を収集した。データクリーニングは行っていない。

投与開始14日後に重症患者の6割が改善、軽症や中等症では9割の患者で改善が認められた。


解析対象は346例で、内訳は次の通り。

性別

男性 262 感染症は男性の比率が高い
女性 84 催奇形性の副作用が知られている

年齢 比較的高齢者が中心


合併症

心血管疾患 30%
糖尿病 26%
慢性肺疾患(COPD) 14%
免疫疾患 6%
いずれかの合併症 53%



迅速観察研究の結果は次の通りで、アビガン投与後の転帰を、主治医の主観で「改善」、「不変」、「増悪」にわけて評価した。

対象患者

結果

投与開始

酸素
投与
機械
換気
7日後 14日後
軽症 無し 改善  70% 90%
中等症 有り 無し 改善 66% 85%
重症 有り 改善 41% 61%
増悪 34% 33%

有害事象は解析した188人のうち、32人(17%)に発生した。

高尿酸血症が15人、肝機能値異常が12人 、高ビリルビン血症、急性腎障害、吐き気、皮疹、薬剤熱が各1人。



土井教授は、転帰の判断が医師の主観によるものであるほか、吸入ステロイドのシクレソニドなどとの併用療法も多く、対照群も置かれていないなど、観察研究の限界もあると指摘した。

治験や特定臨床研究が進行中であることを紹介し、さらなる検証が必要との考えを示した。

ーーー

軽症や中等症では9割の患者で改善がみられるのに対し、重症患者は6割で、悪化した患者が3割もいる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、
アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

このため、ウイルスの増殖前の早期の投与の場合に効果がある。


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