医療機器大手のテルモは4月1日、人工心肺装置(ECMO)の生産台数を2倍程度に増やす方針を明らかにした。
静岡県内の拠点で年間百数十台程度を生産しているが、早期に100台程度を上乗せして生産できる態勢を整える。
ECMOは人工呼吸器でも救命が難しい重症者に使われる治療装置で、テルモは国内最大手。中国での感染拡大が深刻化した1月から、部品メーカーに増産を依頼して準備を進めていた。ECMOに付ける人工肺などの消耗品の増産も急ぐ。
業界2位の泉工医科工業も増産を決めた。
3月の日本呼吸療法医学会・日本臨床工学技士会の調査では、ECMO配置台数は全国で約1400台で、東京には196台、大阪には103台ある。
重症患者を治療する国際医療センターを視察した西村経済再生担当相は「医療供給体制の確保が最優先課題のひとつ」としてECMOなどの増産をあげた。感染者が急激に増えている東京都について「早急に700台まで増やしたい」と述べた。
政府はすでにECMOの増産に補助金を出すことを決めており、企業もフル操業で対応する。
但し、患者1人当たり医師4~5人、看護師10人以上、臨床工学技士2~3人の合わせて20人程度のスタッフが必要とされ、要員の手当てが必要となる。
西村大臣は2日、「すでに人工呼吸器やECMOの導入補助を行っているが、さらに必要となる事態も想定し、1人でも多くの命を守る思いで医療体制の整備に取り組みたい」と述べ、来週まとめる緊急経済対策にECMOの増産や導入支援、さらに扱う人材育成の支援策を盛り込む考えを示した。
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ECMO(Extra Corporeal Membrane Oxygenation)は経皮的心肺補助システムで、急性心筋梗塞等による心原性ショックや心停止などの緊急症例に対する治療で、太腿の血管に直接カテーテルを挿入して血液を体外へ引き出し、遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路からなる人工心肺装置により、患者の心臓と肺の代わりの役割を果たす。
1分間でおよそ4リットルの血液を入れ替えることができるという。ECMOを使い、弱った肺を休ませている間に対症療法を行い、患者自身の免疫によってウイルスが排除されるのを待つ。
「人工呼吸器」は肺の機能を「補助」するもので、肺に酸素を入れ、肺から血管の中に入れていくもの。初期の患者に使われる。
一方、「ECMO」は肺の機能を「代替」するもので、血管の中に直接酸素を入れる装置。
血液を太ももの付け根の血管から取り出し、エクモの「人工肺」に血液を送り、二酸化炭素を取り除く。その後、血液を血管に戻すことで、体の中の臓器に酸素が届けられる。
ECMOで血液が循環している限り、肺が止まって呼吸をしていなくても生きることができるため、肺の機能を使うことが難しい重篤な患者に使われる。エクモの使用期間は2~4週間とされる。
呼吸だけのサポートを目的とするVV-ECMO(体外式膜型人工肺)と 、主に循環のサポートを目的とするVA-ECMO(経皮的心肺補助)があ り、エルモは後者をPCPS(Percutaneous Cardio Pulmonary Support)と呼んでいる。
テルモがPCPSの開発を本格的に手がけたのは1989年で、開発にあたっては、QUICK(5分以内でセットアップ可能)、COMPACT(救急車に搭載可能)、 SIMPLE(最低必要な機能)の3つを設定して、研究開発にチャレンジした。
1999年に米国3M社からカーディオバスキュラー(人工心肺関連事業)を譲り受け、テルモカーディオバスキュラー社を設立、カニューレ、血液ガスモニター機器、ローラーポンプなどを加えて、人工心肺システムのすべてを供給できるようになった。
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