テルモは4月13日、同社の遠心型血液成分分離装置「スペクトラオプティア」(Spectra Optia® Apheresis System)が、スイスのMarker Therapeutics AGの「D2000吸着カートリッジ」との組み合わせで、米国FDAから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象とする緊急使用の許諾(EUA: Emergency Use Authorization)を受けたと発表した。
COVID-19に対する緊急使用許諾は、検査キット、診断機器、防護服(PPE)などには出されているが、治療機器としては初めてで、 COVID-19を原因とする呼吸不全で集中治療室(ICU)に入院している18歳以上の患者に使用することと、公衆衛生の緊急事態である期間のみの使用が条件となっている。
「スペクトラオプティア」は、テルモの米国子会社のTerumoBCTの製品で、血液を採取し遠心方式で血液成分を分離する装置。
血中から病気の原因となる液性因子(抗体、炎症性サイトカイン、有害代謝物質、中毒物質など)や細胞(リンパ球、顆粒球、ウイルスなど)を除去し、病態の改善を図るアフェレシス治療などで使用されてい る。
TerumoBCTは、2011年4月のテルモによるCaridianBCT 買収に伴い、CaridianBCTとテルモの血液事業部門の統合により設立された。
Marker Therapeuticsはスイスの医薬品メーカーで、臨床段階のがん免疫治療を手掛ける。血液がんおよび固形腫瘍の治療に特化した次世代のT細胞ベース免疫治療の開発に注力している。
サイトカインストームや重度の炎症反応症候群などの治療のために、炎症性サイトカイン、代謝廃棄物などを血漿から除去するための、特許取得済みの血漿カートリッジを扱う。
インフルエンザやコロナウイルスなどの感染症では、ウイルスを排除するために分泌されたサイトカインが、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応を起こし、重篤な呼吸障害につながることが知られている。
サイトカイン(cytokine)は主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、生体内の様々な炎症症状を引き起こすもの(TNF-αやIL-6等)を炎症性サイトカインと呼び、炎症症状を抑制する働きを有するもの(L-10やTGF-β等)を抗炎症性サイトカインと呼ぶ。
サイトカインストーム(cytokine storm)は、感染症や薬剤投与などの原因によって血中サイトカイン(TNF-αやIL-6等)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する状態をいう。
患者の血液を「スペクトラオプティア」のディスポーザブル回路に通すことで、血球と血漿に分離する。
この回路に接続した「D2000吸着カートリッジ」が、血漿中に存在するサイトカインを減らし、血液はまた患者の体内に戻る。
サイトカインの減少により、サイトカインストームが抑制され、呼吸障害の改善が期待される。
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