OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意

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OPECプラスは4月12日、4月9日に続いてふたたび緊急テレビ会議を開き、アジアの原油市場が開く直前に日量970万バレルの減産で最終合意した。

協調減産への参加に難色を示していたメキシコに配慮し、メキシコの減産を当初の割当の40万バレルから同国主張の10万バレルに落とした。

サウジとロシアは各250万バレル減産する。
これらは2018年10月の生産量をベースとする減産量で、
サウジは現在、過去最高の日量1230万バレルを生産しているとみられ、実際の減少幅はもっと大きくなる。

付記 7~12月は770万バレル、2021/1~2022/4月は580万バレルにする。
   各国は2018年10月の生産量をベースとするが、サウジとロシアは1100万バレルを基準とし、
   250万バレル減らし、850万バレルとする。

付記 サウジのエネルギー省は5月11日、Saudi Aramcoに日量100万バレルを6月から追加減産するよう指示した。
   6月の生産量目標を日量750万バレル弱とする。

ペルシャ湾岸のOPEC加盟国は合意よりも大幅な減産を行う見通しとされる。

OPECプラスはこの合意をテコに米国などOPECプラス以外の主要産油国に価格下支えで協力を求める。

トランプ米大統領はツイッターで、「米エネルギー業界の数十万の雇用が守られる」と投稿し、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのサルマン国王に謝意を示した。

The big Oil Deal with OPEC Plus is done.
This will save hundreds of thousands of energy jobs in the United States.
I would like to thank and congratulate President Putin of Russia and King Salman of Saudi Arabia.
I just spoke to them from the Oval Office.
Great deal for all!


付記 IEA事務局長は4月17日、日経に対し、供給調整が日量1500万バレルになるとの見通しを示した。

OPECプラスが970万バレル、米・加・ブラジル・ノルウェー4か国が360万バレル減産、中・印・米・韓が市場の余剰原油買入 200万バレル。
なお、4月の原油需要が前年比2900万バレル減と予想。

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OPECプラスは4月9日、5月と6月に日量1000万バレルを協調して減産することを決めた。7~12月は800万バレル、2021/1~2022/4月は600万バレルにする。

1000万バレルのうち、サウジとロシアが250万バレルずつ引き受け、生産量をそれぞれ日量 850万バレルに落とす。他のメンバーは23%カットする。

しかし、この計画は、非OPECのメキシコが削減参加を拒否し、破綻した。
メキシコの2019年の生産は168万バレルで、23%の40万バレルの減産を求められたが、メキシコは日量10万バレル減産を提案した。

その後、トランプ米大統領がメキシコの減産のうち、日量25万バレルの減産を肩代わりすることでメキシコと合意した。 (合計35万バレルの減産で5万バレル不足)

しかし大統領は、米国はこれは「すでに実施済みだ」としており(需要減、価格ダウンによる自主減産の一部で、ロシアなどは「減産」とは認めていない)、かつ、メキシコに後日補償を求めるとした。(内容不明)

最終的にこれは採用されなかった。


OPECプラスは、米国やカナダ、ノルウェーなど枠組みに参加していない産油国については、4月10日に開かれる主要20カ国・地域(G20)エネルギー相会合で減産への協力を取り付けることを目指した。
日量500万バレル削減を求め、全体で1500万バレルの減産を目指した。

日量 1000万バレルの減産は世界の供給の約10%に相当し、過去最大の減産であるが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の落ち込みによる需要の減少は日量2000万バレルを超えるとみられており、需要の喪失分にははるかに及ばない。

また、米国は現在、ロシア、サウジと肩を並べる日量1000~1100万バレルの生産をしており、米国だけ減産しないのは筋が通らない。これまでもOPECプラスが減産すると米国のシェールオイルが増産し、サウジやロシアが不満を表明していた。

しかし、4月10日のG20エネルギー相会合の声明では「世界経済の回復とエネルギー市場の安定を確保するため、協調した対応策を作るよう協力する」と したが、OPECプラス以外の諸国の減産目標は明記できなかった。

カナダとノルウェーはこれまでに減産に前向きな姿勢を示していた。

しかし、 ブルイエット米エネルギー長官は会議で米国の生産量は2020年末までに日量200万バレル減るとの見通しを説明。OPECプラスには減産を求める一方で、「自由で開かれた原油市場」を重視する考えを強調し、生産量を連邦政府が決めるのは適切ではないとの建前論にとどまった。

トランプ大統領は4月6日に、米国の産油量はすでに減少しているとの見方を示した。
米エネルギー省は、米国の産油量は政府が行動しなくてもすでに減少して おり、さらに原油安を受け操業を縮小せざるを得ないため、米国の産油量は一時的に日量200万バレル程度減少するとの見方を示した。

しかし、ロシアの大統領報道官は原油需要減少や原油安を背景にした米国の減産を、市場安定に向けた協調減産は全く異なる削減だと述べ、減産の枠組みへの参加と応分の負担を求めた。

米国は代わり国家戦略備蓄施設の活用を提案した。

備蓄施設を民間企業に貸し出し、行き場を失った原油を貯蔵し市場の流通量を削減するという もの。
ただ米国の備蓄枠は7億1350万バレルでそのうちの約9割がすでに埋まっており、供給過剰の解消には効果が薄い。

国際エネルギー機関は4月13日にメンバー国による備蓄積み増しを発表するという。

なお、米国で原油生産量が最も多い南部テキサス州では当局が州内の生産量を制限する案が浮上しているという。

今後、このOPECプラスの決定が効果を生むかどうかは、米国の動きによると思われる。

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