新型コロナの次は「ハンタウイルス」

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新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、中国で別の感染症による死亡事例が確認された。

中国では習近平主席が3月10日に武漢を視察したのを境に「復工復産(産業・経済活動の再開)」が加速され、コロナ対策のため自宅待機していた多くの労働者が工場や工事現場などに戻っている。

3月23日午前4時ごろ、京昆高速道路を走行中の大型バスで 雲南省臨港市から山東省栄成市の出稼ぎ先工場に向かっていた労働者・田さんが、陝西省寧陝県付近で倦怠感、発熱、呼吸困難、筋肉痛など新型コロナウイルス感染症によく似た症状を訴え、途中下車し、県内の病院に入院した。

しかし、発症からわずか3時間後の同日午前7時10分に急死した。新型コロナウイルス検査結果は陰性だったが、体内から「漢坦病毒(ハンタウイルス)」が検出された。

この男性に同行していた2人にも熱が高いことから感染の疑いが持たれているほか、高速バスに乗っていたドライバーや乗客30人が健康観察を受けているが、24時間ごとのウイルス検査では全員陰性だという。

田さんの感染経路などは明らかにされていない。

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ハンタウイルスとはネズミが媒介する病原体で、2週間の潜伏期を経て発熱や呼吸困難を引き起こす。

第二次世界大戦中に旧日本軍が中国東北部の満州国に進駐した際、原因不明の出血熱が流行した記録が残っている。「流行性出血熱」として報告された。
朝鮮戦争のときには国連軍の兵隊の間で約3200人が原因不明の出血熱に感染したことで注目された。

日本では1970年代半ばから各地の医学系動物実験施設においてラット取扱い者の間に不明熱の患者が相次いで発生した。
(1984年までに127人が感染、うち1人が死亡しているが、国内ではそれ以降は患者発生の報告はない。)

1976年に、韓国高麗大学の李氏らが流行地のアカネズミからウイルスを突き止め、 アカネズミを捕獲した川の名前をとって「漢坦病毒」ハンタンウイルス)と命名した。 日本では1982 年に感染研と北大獣医学部により札幌医科大学のラットから原因ウイルスが国内で初めて分離された。

その後の研究の進展に伴い、ブニヤウイルス科の5 番目の新しい属としてハンタ(hanta)ウイルス属と命名された。

感染したげっ歯類の糞便、唾液、または尿と直接接触するか、エアロゾル化した排泄物からウイルスを吸入することにより感染する。

自然宿主のげっ歯目ならびにトガリネズミ目などの小型哺乳動物に対して病原性を示すことはないが、人に感染すると腎症候性出血熱(HFRS)やハンタウイルス肺症候群(HPS)といった重篤な疾病を引き起こす。 両疾患を合わせてハンタウイルス感染症と総称する。

ワクチンはHFRSに対して韓国と中国で市販されているいるが、我が国では用いられていない。治療法は対処療法による。

ハンタウイルス感染症ではヒトからヒトへの感染が起こらないと考えられているが、1996 年9 月の南部アルゼンチンのケースで、ヒトからヒトへの感染が起こった例が確認されているという。

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