富士フィルム、アビガン増産

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富士フィルムは4月15日、「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)の生産体制を拡大し、増産を開始したと発表した。

政府が緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定したことに対応する。

「アビガン」の増産を支援し、2020年度中に現在の最大3倍にあたる200万人分(インフルでは600万人分)の備蓄を確保する。中国に集中した部品の生産拠点などを国内に回帰させる企業に費用の最大3分の2を補助する。

富士フィルムは既に、新型インフルエンザ流行に備えた国家備蓄用に200万人分を約68億円で納入しているが、これまで、新型コロナウイルスと新型インフルエンザでの用法用量が異なるかは定かでなかった。

2月26日に日本感染症学会が「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方」で暫定的な指針として、アビガンの用法・容量を発表した。

当初の新型インフルエンザの場合(成人):

1日目は1回 1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回 600mgを1日2回経口投与する。総投与期間は5日間とすること。
合計 8,000mg

COVID-19の場合:

1日目1,800mg/回×2回、2日目以降800mg/回×2回、最長14日間  
合計最大 24,400mg  新型インフルエンザの場合の3倍

これに基づくと、現在の備蓄は70万人弱分しかないことになり、増産により200万人分まで拡大する。

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3月上旬時点でのアビガンの生産能力は月4万人分強である。

増産には原料や生産設備の確保が課題となっていた。

現在、原料のマロン酸ジエチルは中国から輸入している。

デンカが、原料から最終製品に至る一貫生産体制のもと、2017年4月まで国内で生産を行ってきたが、海外製品との競合が激しくなり、2017年4月に国内生産を休止した。(設備は残存)
マロン酸ジエチルの原料のモノクロル酢酸は現在もデンカ子会社のデナックが国内で生産している。

政府は国内での一貫した供給体制構築のためデンカに生産再開の要請を行なった。

これを受け、デンカは4月2日、マロン酸ジエチルを新潟県内の工場で5月から生産開始すると発表した。

2020/4/3 デンカ、「アビガン」の原料供給開始

富士フィルムは、グループ会社の富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業との連携によりアビガンの増産を推進する。

カネカも4月16日、原薬を供給することで合意したと発表した。
設備投資、人員配置転換や生産計画調整により製造体制を至急整え、7月より供給を開始する。

付記

チッソ子会社JNCは427アビガン®の中間体について、水俣製造所内のプラントで製造し、供給を開始すると発表した。

付記

広栄化学は4月30日、原料のピリジンの供給を発表した。なお、同社はレムデシビルの原料としてピロールを供給している。

本年7月にはこれまでの2.5倍の約10万人分/月、同9月には約30万人分/月(同約7倍)の生産を実現する。

今後は和光純薬の子会社の富士フイルムワコーケミカルが約10億円を投じて、原薬の生産能力を引き上げる。10月以降の稼働を目指し、さらに約10万人分のアビガンを増産する。(合計40万人分/月)

順調に進めば、年内にも日本政府の備蓄要請(+130万人分)に対応できることとなる。同社では増産を進め、海外からの提供要請にも対応する。

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