EUと英国は5月15日、5日にわたった第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。
最大2年の期間延長を決定できる期限が6月末に迫る。6月初めに予定する次回会合で正念場を迎える。
付記
6月の交渉は6日に成果なしで終了した。
引き続き話し合いを重ねる意向だが、月内でトップ同士で月内に中間評価を実施する。
特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」 で、EUは関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めている。
これは、2国間のFTAではなく、実質的に英国が重要な分野でEUに残留するものである。
世界のFTA交渉でこんな条件はなく、英国が受け入れる筈はない。
漁業に関しては、英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしているが、EUは従来通りのEU諸国の操業権を求めている。
2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航
最後の交渉でEUが降りない限り、英国は年末に「FTAなし」で離脱する可能性が強まっている。
英・EUの間では移行期間を2022年末まで延長できることになっており、6月末に判断する。
しかし、仮に延長しても、EUが態度を変えない限り、今後決着する可能性は少ない。
また、移行期間中は英はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる。
ジョンソン首相は離脱関連法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも本年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。
2020/1/10 英下院、EU離脱法案を可決 1月末の離脱実現へ
英国は、最後の交渉でEUから良い条件を引き出すため、準備を加速している。
英国は5月19日、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表(UK Global Tariff )を発表した。
企業が海外から製品を輸入するのを容易に、かつ安くすることで経済を支援する。現在のEUのそれより簡単で、使用が容易で、関税を引き下げる。複雑な手続きを無くし、不要なバリアを除去し、コストを下げ、消費者の選択を増やす。
無関税の貿易を拡大する。
農業、自動車、漁業などの分野では多くの製品で関税を維持する。
英国産業のバックアップ
- 肉類などの農産物の関税維持
- 自動車関税10%維持.
- ほとんどのセラミック製品の関税維持.
- 英国のサプライチェーンに入る300億英ポンド相当の製品の関税免除
関税撤廃で消費者の選択が増え、コストが下がる。
- 皿洗い機、フリーザー、衛生製品、ペンキ、鏡、ハサミ、クリスマスツリー等
再生エネルギー関連の100以上の製品の関税を撤廃し、再生可能経済を推進
ほとんど全ての医薬品や医療機器は関税を免除する。
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英国は北アイルランドを含め、EU関税同盟から離脱するが、アイルランド島の国境には物理的な関税等は設けないため、下記の特殊措置をとることとなっている。
2020年末までの移行期間終了後、名目上は北アイルランドを含む英全土がEUとの関税同盟から抜ける。
しかし、アイルランド島の国境付近での税関業務を省略できるよう、北アイルランドに限り関税手続きをEU基準に合わせる。
英本土から北アイルランド向けの品物はいったんEUの関税を徴収されるケースも出る。本土から北アイルランドに入る段階でEU関税を支払い。(英国が実施するが、EUは立ち合いの権利を持つ。個人の荷物はチェックしない。)
北アイルランドに留まるものは関税還付。
アイルランドに運ばれるものは関税還付なし。
英国は5月20日、本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、北アイルランドに税関を設置しないと発表した。
既存の農業食品のチェックポイントは拡張するが、税関設備はつくらない。
英国の他地域から北アイルランドに入る製品のうち、アイルランド共和国向けのもの及びそこから輸出されるものだけに関税が課せられる。
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