東京大学、アビガンとフサンの併用療法の臨床研究開始

| コメント(0)

東京大学医学部附属病院は5月8日、肺炎を発症している新型コロナウイルスSARS-CoV-2陽性患者を対象に、ファビピラビル(アビガン®200mg)とナファモスタットメシル酸塩(注射用フサン®50の併用療法の特定臨床研究を開始したと発表した。

付記

東大医学部附属病院は7月6日、重症患者へのナファモスタットメシル酸塩(商品名フサン他)、ファビピラビル(商品名アビガン)併用療法の観察研究の結果を発表した。
患者11例中10例で症状の軽快が見られ「併用の有効性を示唆する」としている。結果は3日付の医学誌『クリティカル・ケア』(電子版)に掲載された。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。Remdesivir も同じくRNAポリメラーゼ阻害剤である。


ある報告では、投与開始14日後に重症患者の6割が改善、軽症や中等症では9割の患者で改善が認められた。

2020/4/21 アビガン投与で重症患者6割、軽中等症患者9割が改善 


東京大・医科学研究所の井上純一郎教授らは3月18日、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると発表した。

ウイルスが人体に感染するには細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要である。

コロナウイルスの場合、ウイルスのSタンパク質がヒト細胞の細胞膜のACE2受容体に結合したあとに、タンパク質分解酵素(TMPRSS2)で切断され、Sタンパク質が活性化されることが重要であるが、ナファモスタット(フサン)はTMPRSS2による切断を阻止し、ウイルスの侵入を阻止する。

2020/3/18 急性膵炎治療薬が新型コロナウイルス感染阻止の可能性

フサン(感染阻止)とアビガン(増殖阻止)は、作用部位が異なるため、両者を併用することで相加的な効果が得られることが期待される。
また、新型コロナウイルス感染症の一部の患者では血管内での病的な血液凝固が病気の悪化に関与していると考えられ、フサンの抗凝固作用が有効であると期待できる。


本試験は東京大学医学部附属病院のほか、多施
設共同で実施する。

対象は肺炎を有するCOVID-19患者で、2074歳の男女。

アビガンとフサンの併用群と、アビガン単独群の二群で薬剤の作用を比較し、想定される有効性や安全性が認められるか確認する

付記

鳥居製薬からフサンを承継した日医工は5月18日、フサンの増産を発表した。

現在は鳥居製薬(日本たばこ産業子会社)に委託し、年65万本程度生産しているが、能力の100万本まで増産する。
別途、自社の愛知工場に40億円をかけて年内に稼働、委託分を含め能力を年300万本にする。

コメントする

月別 アーカイブ