原燃・再処理工場の安全基準「適合」へ

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原子力規制委員会は5月13日、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の青森県六ケ所村の再処理工場について、安全審査で国の新規制基準を満たしていると判断し 、事実上の合格証となる「審査書案」をまとめた。

付記 原子力規制委員会は7月29日の定例会で、安全審査の合格を正式に決めた。残りの規制手続きや安全対策工事の完了などに1年以上を要する見通しで、稼働は2021年度以降となる。

審査は、再処理工場の構造が原発と異なり前例がないことから、慎重に進められた。

日本原燃は当初、地震の最大の揺れ(基準地震動)を600ガル、青森と秋田の両県境にある十和田火山の噴火で降り積もる火山灰を30センチと想定 したが、審査の結果、基準地震動は700ガル、火山灰は青森県の八甲田山の噴火も考慮に入れ55センチと見直して対策をすることになった。落下してくる飛行機への対策なども十分だと評価された。

稼働には安全対策工事の完了や立地自治体の同意が必要で、2021年度以降となる。

新規制基準の対応前に約2兆2000億円を見込んでいた建設費は 3兆円近くに膨らむ。

なお、同地のウラン濃縮工場については、2017年5月17日に新規制基準に基づく安全審査に合格したとする「審査書」を正式決定している。

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原燃の再処理工場は使用済み核燃料からウランやプルトニウムを商業的に取り出す国内で唯一の施設。100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できる能力を持つ。

建設は1993年に始まった。しかし相次ぐトラブルにより、完成時期は24回も延期。当初は1997年だったが、現在は2021年4~9月を予定している。

再処理の仕組み:

軽水炉では、中性子が当ってウラン235が核分裂したときのエネルギーで発電する。

その時、一部の中性子が核分裂しないウラン-238にも当り、ウラン238はベータ崩壊を繰り返し、プルトニウムに変化する。

プルトニウムの一部が核分裂するときに発生する熱も発電に役立つ。

残ったプルトニウムとまだ使えるウラン235を再処理して取り出し、ウラン燃料やMOX燃料の原料として使うもの。


当初は再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用する計画であった。

高速増殖炉では使用済み燃料から取り出したプルトニウムを再利用する。

高速増殖炉の燃料は、①最初の分裂を起動させるための若干のウラン235、②プルトニウム239、③そのまわりをぐるっとウラン238で囲んだ八角形の構造である。

核分裂が始まると中心のプルトニウムから中性子が飛び出し、外側のウラン238に当って、さらにプルトニウムを作る。

軽水炉では中性子がぶつかって核分裂を起こすたびにウラン235は減るが、高速増殖炉では、核分裂によってウラン238がプルトニウムに変わって増えるため発電しながら消費した以上の燃料を生成できる。「核燃料サイクル計画」と呼ばれた。

ウランを輸入に頼る日本にとっては理想的なものであった。

福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅは、高速増殖炉実用化のための原型炉として建設されたが、冷却用ナトリウム漏れ事故等のトラブルにより、ほとんどの期間は運転停止状態であった。2016年12月21日に廃炉が正式決定され、現在、廃炉作業中。

間もなく承認される再処理工場では、100万キロワット級の原発約40基分に相当する年間800トン(ウラン換算)の使用済み核燃料を処理できるが、54基稼働していた原発で廃炉が相次ぎ、再稼働したのは9基に過ぎない。MOX燃料を使える原発は限られる。

また、高速増殖炉もんじゅは廃炉となり、消費量は極めて少ない。 稼働しても順調な操業は考え難い。

過去にMOX燃料を使用した原発

東京電力 福島第一 3号機 廃炉
九州電力 玄海 3号機  稼働
中部電力 浜岡 4号機 審査中
四国電力 伊方 3号機 稼働
北海道電 泊 3号機   審査中
関西電力 高浜 3&4号機 稼働

計画中の原発

東北電力 女川 3号機
電源開発 大間

実際には、原発の使用済み核燃料は再処理用として青森に運んでいるが、再処理をやらなければただの核のゴミであり、処分が必要となる。国、電力会社と青森県との約束で、電力会社は使用済み核燃料を青森県から持ち出さなくてはならなくなる。再処理工場のプールは既に満杯でこれ以上の受け入れができない。

再処理工場の稼働で、使用済核燃料は「核のゴミ」ではなく「原料」の位置づけになる。

なお、現在はフランスなど海外の工場での再処理でMOX燃料へと加工している。

四国電力は2020年1月6日、伊方原発3号機で、日本で商用原発で初めて使用済みMOX燃料を取り出した。次いで1月27日に関西電力の高浜3号機でも取り出した。

政府は使用済みのMOX燃料をさらに再処理する方針だが、必要な工場の建設計画はメドは立っていない。プルトニウムの濃度が高く、臨界の危険性などから、六ヶ所では再処理できない。使用済みのものはたまり続けることとなる。

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