ジョンソン英首相とEUの欧州委員会のUrsula von der Leyen 委員長、Charles Michel EU大統領(常任議長)、David Sassoli 欧州議会議長が6月15日午後にテレビ会談を行った。
ジョンソン首相は移行期間の延長を求めないと伝えた。この結果、離脱協定の規定の通り、移行期間は12月31日に終了する。
離脱協定によると、移行期間の延長は1回に限り、1年あるいは2年の期間でされるが、そのためには、6月30日までに双方で合意・決定する必要がある。
これを踏まえて首脳らは、来月から交渉を加速させる必要があるとの認識で一致、自由貿易協定の基礎となる方針について暫定的な合意を得ることも模索する。
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EUと英国は5月15日、第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。
2020/5/28 英国、FTAなしのEU離脱準備
6月の交渉も6月6日に成果なしで終了した。
問題は、EUが突き付けた2つの事項である。
EUの欧州委員会は2月3日、英国との交渉の基本方針案を公表した。
関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めることを明確にした。
英国が過度な規制緩和で不当に競争力を高めて、域内企業が競争上、不利になることを恐れ、「非常に野心的な貿易協定を提案する用意がある」としつつ、「競争を開かれた公平なものにする必要がある」と、関税・数量割り当てゼロのFTAは、これら 「公正な競争環境の確保」(Level Playing Field)の徹底した履行義務が条件としている。
また、英領海での加盟国の漁業権確保をFTAに盛り込むことも条件としている。
前者は実質的なEU残留であり、離脱の意味が無くなる。後者は英国にとって主権の問題である。
EU側がこれに固執する限り、交渉期間を延長してもまとまる可能性は少ない。
また、延長の移行期間中は英国はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる 。
2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航
6月11日、ジョンソン英首相とEUの欧州委員会のフォンデアライエン委員長、ミシェルEU大統領(常任議長)、サッソリ欧州議会議長が6月15日午後にテレビ会談を行うと発表。
6月12日、英国のゴーブ内閣府担当相は、FTAなど新たな関係構築に向けた交渉について、年末としている期限を延長しない方針をEU側に正式に通告した。
英国は当初から、6月に交渉が英国の望む方向へと進んでいるかを見極め、交渉を継続するか 、合意なしに12月31日に離脱する準備に「集中する」かを決定する方針としていた。
6月12日、英政府とEUは、将来関係を巡る交渉を6月から7月にかけて集中的に実施すると発表した。週1回の交渉ラウンドを6月29日に開始し、7月27日の週まで計5回継続する。
上記の通り、英国は、6月時点で進展がなければ、交渉を継続せず、合意なしに12月31日に離脱する準備に「集中する」ことを決定するとしていた が、今後も努力を続けることとした。
6月15日のトップ会談は年末期限を延長しないこと、しかし今後も交渉を続けることを確認した。
ただし、EUが基本条件で妥協しない限り、FTAの年内合意は困難とみられている。
英国は既に離脱の準備を進めている。
英国は5月19日に、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表を発表し、FTA無しの離脱の準備を進めている。
離脱後の本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、英国は5月20日に、北アイルランドに税関を設置しないと発表している。
2020/5/28 英国、FTAなしのEU離脱準備
韓国国会は2019年10月28日の本会議で、英国とのFTAの批准同意案を可決した。英国がEUを離脱した場合、自動的に発効される。
英国はこれまでチリ、アイスランド、ノルウェー、スイス、カリブ海諸国、東南部アフリカ市場共同体、イスラエルなど38カ国と13件のFTAを締結している。アジア諸国のうち、英国とのFTA批准を完了したのは韓国が初めて。
2019/9/5 韓国、韓英FTAをBrexit前に批准へ
米英両政府は5月5日から、2国間のFTAの交渉を開始した。
日英両政府は6月9日、両国間のFTA締結に向けた交渉を正式に開始した。英国のEU離脱移行期間が終わる2020年末までに妥結・批准し、2021年1月1日の発効を目指す。
英国は交渉開始に先立つ5月12日に交渉方針を発表、両国間の自由なデータ移転などを含むデジタル貿易などで、日EU・EPAを上回る野心的な取り決めを目指すとしている。他方、物品貿易では交渉目的の中で、農産品や繊維製品などで対日輸出拡大を目指す考えを表明している。
日本側では農産品の輸入数量割り当てや、自動車・同部品などの英国輸入関税の早期撤廃などが争点となる。
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