アリゾナ州のトラックメーカーNikola Motorは6月4日、米NASDAQ市場に上場を果たした。
同社は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のトラックを開発する2014年創業のスタートアップ企業で、まだ生産工場を持っていない。
韓国のハンファ(ソーラーパネルメーカーとして)、独ボッシュ、伊CNH Industrial などから初期投資を受けている。
今回の上場は、ナスダック市場に上場している特別買収目的会社のVectoIQ Acquisitionとの逆さ買収によるもの。
VectoIQ Acquisitionは元GM副会長のSteve Girskyによって設立された特別買収目的会社(SPAC)で、ハイテク輸送分野への投資を本業としている。
VectoIQ Acquisitionが6月3日にNikola Motorを33億ドルで買収、Nikola Motorが存続会社となり、Nikola Corporationに改称した。
上場初日の6月4日の取引終了時の株価は33.75ドルで、時価総額は約120億ドルになった。
6月9日には79.73ドルに上がり、時価総額が約288億ドルに高騰した。33億ドルと評価された会社が8.7倍になった。(6月19日終値は65.51ドル)
Nicolaの創業者兼CEOのTrevor MiltonはNikola Motorの株式の40%を保有しており、上場後の持ち分は、30%以上になるとされている。
CEOは、「上場により新たな資金を調達し、強固なビジネスモデルを確立する。当社はエネルギーや輸送分野を根本から変えていく」と宣言した。
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Nikolaの社名は、同じ電気自動車メーカーのTeslaと同様、19世紀中期から20世紀中期の電気技師、発明家のNikola Teslaから採っている。
Nikola Teslaはクロアチア生まれで、1884年にアメリカに渡りエディソンのもとで働くが1年後に独立した。
交流電動機やテスラ変圧器を発明、回転界磁型の電動機から発電機を作り上げ、ナイアガラの滝発電所からの送電に応用し高圧電流を発生させ効率の高い電力輸送を実現させた。
1880年代にNikola TeslaとGeorge Westinghouseは交流送電を主張、直流送電を主張するEdisonと争った。その後、交流変圧器が進化したことで、電圧変換が容易な交流送電が圧倒的に有利となった。
この争いは上映中の映画「エジソンズ・ゲーム」(原題:The Current War)で描かれている。
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Nikolaは自動車業界での経験がゼロのエンジニアを中心に採用し、従来の概念に囚われない技術開発を推し進めている。水素燃料電池トラックの評価は非常に高い。
2014年の創業以来、同社は水素を活用した電動のビジョンをパワースポーツに、最近ではピックアップトラックに広げてきた。
まだ工場を建設中だが、既に約14,000台の電動トラックの受注を獲得しており、納車を完了すれば100億ドルの売上が見込める。
Milton CEOは、「1人のセールスマンも雇わずに100億ドル規模の受注を勝ち取った」としている。
これまでに Nicola One (sleeper semi-truck)、Nicola Two (day cab semi-truck)、Nicola Tre ( cabover semi-truck) を発表している。
2020年2月に、ピックアップトラックBadgerを発表した。自動車メーカー(社名明らかにせず)に委託し、6月中に発売する。
「BADGER」は、リチウム電池と水素8kgを使った120kWの水素燃料電池を搭載しており、ピークHPは906馬力で航続距離は約965km、そして時速0~100kmに到達するまでたったの2.9秒とされる。
価格は安くて6万ドルから、以降オプションに応じて9万ドルになると見られる。
Nicola Oneは水素燃料電池だが、以降は全てリチウム電池と水素燃料電池併用の「hydrogen-electric hybrid truck」である。
CEOは「2種類を組み合わせた方が、効率良く電源を制御できる」とその理由を説明している。
NicolaはNicolaへの出資者であるイタリアのCNH Industrial 傘下の商用車メーカー Iveco と組み、2021年3月までに Ivecoのドイツ工場でNicola Tre の生産を始める。
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Nicolaは並行して、米国中に大規模な水素ステーションのネットワークを構築する ことを計画している。
炭素排出量を削減するために、再生可能電力で水を電気分解して水素を生成する 。
同社の基本ビジネスモデルは7年間のリース契約である。
Nikolaは2018年5月にビール大手のAnheuser-BuschからFCトラック800台のリース利用について受注 した。受注額は100億米ドルで、燃料費込みの契約である。
Anheuser-Buschのゼロエミッション化計画に基づくもので、Bud Lightなどのビールを米ミズーリ州セントルイスの醸造所から卸売業者までNicola Twoで輸送、そこからの配送は中国のBYDの電気自動車(EV)トラックで行う。Nicolaは2019年10月に21台を試験的に納入した。
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