トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

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トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

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香港の「憲法」である香港基本法の23条は、香港特別行政区が「国家への反逆、国家の分裂、反乱の扇動、中央政府の転覆、国家機密の不正な取得を禁止し、外国の政治組織が香港で政治活動を行ったり香港の政治団体が外国の政治団体と関係を持ったりすることを禁止する 」法制定を求めており、香港は2003年に法律制定を進めようとしたが、反対が強く、撤回され、現在もまだ制定されていない。

今般、中国全人代は、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「国家安全法」を香港に導入する方針を5月28日に採択した。習近平指導部は今夏にも具体的な法整備を行う。

香港には中国本土の法律は原則適用されないが、 例外として全人代が定めた法律でありながら香港にも適用可能な「全国性法律」がある。香港基本法の18条において「全人代は香港特別行政区基本法委員会と香港特別行政区政府に意見を尋ねた後に全国性法律を追加または削除ができる 」と定められている。但し、「国防、外交などに限定される」とも定められている。

現在、13の全国性法律がある。

建国記念日、国旗、国歌など国家の儀礼的なことを定めた法律が5つ、
領海やEEZに関する法律が3つ、
外交特権・領事特権に関する条例が2つ、
国籍法、
人民解放軍を置く法的根拠となる香港特別行政区駐軍法、
外国の中央銀行に法的特権を認める法律

今回、2015年に施行された中国の国家安全法を全国性法律として追加する形ではなく、新たに全人代が 「香港国家安全法」を作る。

次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。

  • 分離独立行為:中国からの離脱
  • 反政府行為:中央政府の権力あるいは権威の弱体化
  • テロ行為:人への暴力や脅迫
  • 香港に干渉する外国勢力による活動

香港が香港基本法23条で決められている法制定を実施していないため、基本法18条に基づき全人代が全国性法律を追加するという形態をとっている。

中国は今回の法制定の基本原則は下記の通りとしている。

第1に、国家の安全を断固として維持する。
第2に、「一国二制度」の制度体系を堅持し、完全なものにする。
第3に、法に基づく香港統治を堅持する。
第4に、外国の干渉に断固反対する。
第5に、香港市民の合法的権益をしっかりと保障する。

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1997年7月1日に、香港がイギリスから中国に返還され、中国の特別行政区となった。 50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持することが約束された。香港には「高度な自治」が認められ、言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由などが保障された。

米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States-Hong Kong Policy Act)の効力が発生した。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

なお、米国と中国の関係悪化を受け、2019年9月25日に「香港人権・民主主義法案」が可決された。優遇措置の前提である「一国二制度が守られている」状態かどうかを毎年検証することが米国政府に義務付けられ、検証の結果、一国二制度が継続されていないという結論になれば、優遇措置が見直される可能性がある。

今回、大統領は、米政府の対応は犯罪人引き渡しから輸出規制にわたる「香港を巡る広範な合意」が対象で、「例外はほとんどない」とし、「米国の措置は力強く、意味があるものとなる」と語った。ただ、こうした措置を実施する期限は示さなかった。

香港にも中国本土と同じ関税率が適用され、対中追加関税も上乗せされる 可能性がある。 また、米投資家が香港から資金を引き揚げたり、米ドルと香港ドルの交換が規制されたりする事態も懸念される。

中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は香港経由である。香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。


トランプ大統領はこのほか、次の点に言及した。

新型コロナウイルスへの対応などをめぐって「中国寄り」と批判してきたWHOに対し、米国が求めてきた改革を行わなかったと指摘し「関係を断絶する」と断言、脱退の意向を表明した。
WHOへの資金拠出を他の国際公衆衛生活動に振り向けるとも語った。 

中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を隠蔽し 、WHOへの報告義務を無視し、その後もWHOが世界に誤った情報を出すよう、圧力をかけた。
米国が年間4億5千万ドルを拠出し、中国は4千万ドルしか拠出していないにもかかわらず、中国がWHOを完全に支配している。
改革を求めたが、彼らは動くことを拒んだ。我々はWHOとの関係を終了させる。

香港の自治侵害にかかわった一部の中国・香港政府高官への制裁

一部の留学生・研究者へのビザ発給停止

「安全保障上の理由」としており、中国軍と協力する研究機関や企業に所属する中国人らが対象となる模様

具体的には中国の軍・民融合戦略を実行する機関と関連する大学院以上の中国国籍者のF(留学生)およびJ(訪問学者)ビザを利用した米国入国を遮断する。
AIなど民間先端技術を活用して人民解放軍を現代化する「軍・民融合」推進大学・研究機関所属や、これら機関で研究した後に米国に入国した中国人留学生と研究員の約3000人も追放される可能性がある。

米国民が中国企業に投資するリスクを回避するための方法を検証

「投資会社は、共有する規則の下で運営されていない中国企業に投資する不当な隠れたリスクに顧客をさらしてはならない」

金融市場に関する作業部会に「米国の投資家保護を目的に、米株式市場に上場する中国企業のそれぞれの慣習」を検証するよう指示した。

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