塩野義製薬、新型コロナウイルス迅速診断法で日本大学、群馬大学、東京医科大学と業務提携

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塩野義製薬は6月22日、日本大学、群馬大学、東京医科大学との間で新型コロナウイルス迅速診断法に関するライセンス契約で合意したと発表した。
今後、
公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、本診断法の実用化に向けて取り組むとしている。

検査キットが診断に使われると判断すれば、厚労省に薬事承認を申請し、今秋の実用化を目指す。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を診断する検査法としては、鼻腔や咽頭、唾液から採取した検体からウイルスの核酸を検出するPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)や抗原検査キット等が用いられているが、これらの検査法では、専用測定器の必要性や、測定の簡便性、迅速性、検体採取時の医療従事者の感染リスク等、依然として多くの課題が残っている。

日本大学、群馬大学、東京医科大学の共同研究チームは、これまでにない全く新しい革新的核酸増幅法(SATIC法:Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes法)によるウイルス迅速診断法の開発に成功した。

日本大文理学部の桑原正靖教授(元群馬大大学院准教授)と東京医科大の河島尚志主任教授との共同研究によるもので、日本大学、東京医科大学が5月14日に発表した。

SATIC法は、特定の遺伝子のみならず、変異遺伝子、さらにはタンパク質や代謝物などの生体内分子も、簡便な手法で特異的かつ高感度に測定できる技術で、COVID-19やインフルエンザウイルス感染症等の検査時点での感染の有無を短時間で簡便に知ることが可能である。

特長は次のとおり:

・ SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染の有無を、検出機器を必要とせず目視で容易に判定可能

・ 検体採取から25分程度で判定可能

・ 偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR法と同等の高い感度  

・ 鼻咽頭ぬぐいの綿棒のみでなく、唾液や喀痰からの検出が可能。
  患者の侵襲性が低く、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減される。
  唾液の場合、患者本人による検体採取も可能

・ サンプル中のごく微量のウイルスを検出することが可能 


SATIC法とは:


特長:

PCR検査に必要な核酸(遺伝子)の抽出作業が不要で、検体をそのまま前処理液と混合し95℃で2分処理することにより、測定の準備ができる。

遺伝子を増幅させるとき、PCR検査では高温と低温のサイクルを多くの場合2時間程度繰り返す必要があるが、新検査法では37℃で20~25分程度にて行える 。

陽性のときは試験管内のナノ磁性ビーズが凝集するため、目で見て判定できる。

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基本原理:

検査試薬の内容:
 環状DNA鋳型1&2 とそれぞれのプライマリー
 デオキシヌクレオシド三リン酸(DNAポリメラーゼの基質)
 DNAポリメラーゼ
 独自開発したG4の蛍光染色薬(ThT-HE)


検査対象が陽性の場合、蛍光染色薬(ThT-HE)が光る。

1段目の反応の詳細


付記 発表ではこれ以上の技術的な説明はない。以下、素人の解釈。   

COVID-19のゲノムは元々、RNAである。 (PCRでは逆転写でDNAにすることが必要)

ウイルスなど環状構造を持つ核酸を鋳型とする生化学反応には、DNAポリメラーゼが作用するローリングサークル型複製反応がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/57/1/57_005/_pdf


SATICはこれを利用するもので、環状DNA鋳型1は一部をCOVID-19のRNAに合うように設計しておく。

RNAがくっつくとプライマリー1が作動を開始、当初の設計通り反応が進み、最後にグアニン四重鎖と
蛍光染色薬が結合する。

PCRのように、逆転写が必要でなく、DNAの増幅も必要でない。


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