エア・ウォーターは6月26日、グループ会社で歯髄関連事業を企画・推進するアエラスバイオが歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始すると発表した。
同社と連携する「RD歯科クリニック」の再生医療等提供計画が厚生労働省にて受理された。
歯髄再生治療は、自らの不用歯から歯髄を採取し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯で神経を喪失した歯に移植することにより歯髄を再生する治療で、世界で初めての取り組みとなる。
今秋には、歯髄幹細胞を培養後に管理が徹底した保管施設で液体窒素に入れて長期間冷凍保存する「歯髄幹細胞バンク事業」も立ち上げる。
エア・ウォーターは2011年に歯科関連事業に本格参入後、2018年にはアエラスバイオ社を設立して歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療の事業化に着手した。
アエラスバイオ(英語表記:Aeras Bio Inc.)はエア・ウォーター70%、歯愛メディカル30%。
歯愛メディカルは国内最大手の歯科用品通販業者で、エア・ウォーターは2016年10月に資本業務提携し、創業家から約95億円で39.9%の株式を取得したRD歯科クリニック(RDとはRegenerative Dentistryの略)は、神戸市のエア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸4階にある。
中島美砂子院長は元国立長寿医療研究センター研究所幹細胞再生医療研究部長で、歯髄再生研究の第一人者。
エア・ウォーターの医療関連事業では、医療用ガスや病院設備工事などの「高度医療分野」の事業基盤を強化する一方、高齢社会の進展に伴って、今後の市場成長が期待できる歯科関連や衛生材料などの「くらしの医療分野」への事業領域の拡大にも注力しているが、中島氏を迎え、2019年5月より「エア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸」内で歯髄幹細胞の培養・加工・保存を受託するための設備を設置するとともに、歯髄再生技術の確立を目指し研究・開発に取り組み、安全性や有効性の検証を進めてきた。
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歯髄幹細胞を用いた再生医療:
体内組織には「幹細胞」が存在し、その幹細胞を移植する再生医療が注目されている。
歯の中の神経組織(歯髄)の中には、「歯髄幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在しており、親知らずなどの不用歯や乳歯から採取することができる。
歯髄幹細胞を用いた再生医療とは、虫歯などにより抜髄治療を行った歯の根管部を完全に除菌したのち、自己の不用歯から採取した歯髄幹細胞を培養加工し、その細胞を根管部へ移植し、歯髄を再生する再生医療技術の一つ
虫歯に対しては、一般的には痛んだ歯髄を除去して詰め物をする抜髄治療を実施し、その後さらに悪化した場合は抜歯治療を行う。
抜髄すると、歯が折れる可能性が高まるほか、細菌に対する防御反応や歯髄組織の一部を修復する機能を喪失する。
抜髄治療は、国内では年間600万症例ほどが行われてるが、「歯髄再生治療」はそれに代わる新しい治療法となる。
歯髄再生治療の流れは次の通り。
①RD歯科クリニックにて、親知らずなどの不用歯を抜歯
②不用歯をアエラスバイオ社の歯髄培養センターへ輸送し、歯髄を取り出し、歯髄幹細胞を培養増殖する。
③RD歯科クリニックにて、その歯髄幹細胞を薬剤と組み合わせ、抜髄した歯に移植
④歯髄幹細胞が分泌する物質のはたらきにより、歯の周囲組織にある幹細胞が歯の内部に集まり、血管や神経が伸びてきて、1か月ほどで歯髄が再生され、歯の感覚が戻ってくる。
⑤6か月~1年ほどで歯髄の周辺組織(象牙質)も再生され、 (エナメル質は再生されないため)最終的に冠や詰め物を入れて歯の上部を修復し、自分の歯で噛めるようになる。
治療にかかる費用は抜歯費用、移植費、検査費等を含めて500,000円~700,000円程度で、不用歯の抜歯後、約1か月かけて幹細胞の培養増殖を行った後、移植を行い、約1年後に治療終了となる。
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